な子

Open App
1/10/2025, 7:59:03 PM

未来への鍵

たくさんの鍵が床にちらばっていた。迫り来る天井を横目に、私は探す。触れた瞬間に輝くとされる未来への鍵はまだ見つからない。
「はーい、時間切れ」
係員の声がした。いや、まだだ。まだ私にはやり残したことが。
「けど、見つからなかったんでしょ? 結局、あなたに未来なんてない」
そうして私は二度と現世に帰ることはなかった。

1/10/2025, 1:19:30 AM

星のかけら

「最後の仕上げはこちらです」
そう言ってテレビの中の料理人は、見た事のない丸い食材を取り出した。
「こちらを砕いて、ふりかければ完成です」
テレビの中には見たことのないケーキがあった。純白でムラのない円形は、完璧を形にしたようだった。そこにふりかけられた青い星のかけら。けれどそれはだんだんと黒くなっていく。
「この黒くなった地球が苦味を与えてくれるのですよ」

1/4/2025, 7:08:34 PM

幸せとは

幸せとは目に見えるものではなく、手に触れることも叶わない、幻のような存在だった。それを可視化し、食べられるようにしたのが、父だった。
「お前がいるだけで幸せだったのにな」
父は言った。幸せを求めて戦争が起き、街は破壊され、人々は住むところを無くした。
私の、父と過ごす平穏な日常という幸せも、気付けば無くなっていた。

12/26/2024, 8:10:10 PM

変わらないものはない

生きているかぎり、変わらないものはないの。
私だって、あなただって。
いつまでも、あの頃のままだとは思わないで。
あなたのことなんて、もう好きじゃないわ。
あなたもいいかげん、諦めたら?
機械人形の私たちにとって、
命は永遠かもしれないけど。
心は永遠じゃないから。