野良のノラ

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3/1/2023, 2:21:34 PM

カント哲学では、欲望のままに行動することは自由ではない、とされているが、私はこれに納得がいかない。人間を人間たらしめるものの一つとして、「理性」がある。この理性が、人間を他の生物とは決定的に違う存在へと昇華させている、というような思想は世に数多く存在している。しかし、人間にも確かに理性と対をなすとされる欲望を持っているし、人間以外の生物にも理性的な面はある。実際は、一定以上の知能を持つ生物たちは、欲望と理性の間で揺れ動く、中間者であると言えるのではないか。我々は、私たちの理性的な一面だけを大々的に取り上げ、欲望と対比させることで人間である、というある種の承認を求めていると言える。更に言えば、欲望と理性は本来対立しているものでは無い。欲望を実現させる手段として、私たちは理性を使う。つまり、理性は欲望の奴隷にすぎない。ゆえに理性に従って行動することは、欲望のままに行動することと、何ら変わりは無い。むしろ、全く同じ行動と言った方が適切かもしれない。理性は世間で思われるほど高尚なものでは無いし、欲望を卑しいものと認識すれば、私たちは生きていけない。人間の行動を定める大元となる欲望に従うことは、非常に自由なことのように思う。

2/7/2023, 4:30:31 PM

11/29/2022, 1:43:17 PM

こんなの僕の曲じゃない。違う。違う。これはあなたの音楽だ。あなたの思想だ。そこに僕が居なくなった時点で曲を作る意味は消失する。でも、売れる曲を、売れる曲を作らないと、食うものも無くなる。今住む六畳間の電気とガスはとうの昔に止まってしまった。辛うじて水道は止められていないけど、明日止まるかも分からない。秋の気配も息を潜め始めた今、ここで過ごすのはなかなか辛い。いや、そんなのはどうでもいい。僕はただ、音楽が好きなだけで、音楽を作っていたくて、自分が好きな曲をすきにつくっていただけだったのに。いつからか、高望みするようになってしまった。あなたに僕の曲を初めて聴かせた時か。はたまた、あなたにギターの腕を褒められた時か。はっきりとは覚えていないが、あなたのせいであることは確かだ。あなたに、僕の音を否定されると、溺れたように息が出来なくなって、あなたの音は正しいはずなのに、信じられなくなって。僕は、あなたに愛を乞うようになった。いつも僕にめっぽう厳しいあなたが、時々、本当に時々、照れたように言うんだ。いい曲だなって。僕は、僕の音のために音楽を作っている。なのに、あなたの音を信じてしまう。本当は分かっていた。あなたの言葉は本心なんかじゃなくて、僕の曲は世間から見たら砂場の砂粒一つみたいなもので、音楽に意味なんてものはないって。
今夜は海に行こう。冬がやっと始まったから。ぽっかり浮かんだ月に手を伸ばして、いい月だなって呟いて、そのまま海底に落ちていくんだ。水の冷たさを全身に感じて、僕も音楽になるんだ。ああ、なんて贅沢な結末なんだろう。

11/14/2022, 2:23:15 PM

貴方は、秋風がそよぐ中で一人、欠けない月を見る私の前にいつの間にか現れて、無表情のまま私を酒飲みに誘います。
貴方と酒を飲み談笑する時間は、私の人生において最大の楽しみと言っても過言ではありませんから、断る筈もありません。
貴方とは全く酒の好みが合いませんので、いつも違う色の酒かテーブルに2つ並んでいます。
貴方は酒を飲む間も、決して口数が多い訳では無いですが、情熱的な芸術論者であり、貴方が話す一語一句が私を驚かせます。
貴方は、今まで誰にも知られなかった、知られたくなかった私の憂いを知っているようです。
貴方は、私の心をその冷たい手で撫でてきます。でも、貴方は決して、私の心の中に手を入れることはしません。
貴方は人との正しい距離感というものを熟知しているようで、私はあなたのそれに何度も救われていますし、貴方と一緒に酒を飲めるのはそれのお陰です。
でも、月明かりの差す中で酒を飲むと、それがどうしようもなく寂しくなってしまいます。
どうしようもなく我儘な私を、どうかお許しください。


いつの間にか雪も止んでしまいました。
貴方を望んだ罰なのでしょうか。
辺りが春めく中、貴方の影は今も月明かりの下、秋風に揺られています。

11/11/2022, 1:44:37 PM

飛べない鳥、と自称できるようなおこがましさに月をかざす。深い夜に、溶けていく。

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