業火に焼かれ燃え尽きこの身は塵になってしまったけれど、これまで行けなかったどんな場所へも行ける、そう感じた。風に身を任せまだ見たことのないたくさんの場所へ行こう。そして次に君とまた巡り会えたら、行った先での景色を土産話に、離れてからの寂しさを埋めるように、一生分語り合いたいんだ。
一年後の今日は、どんな日だろう。
天気は?予定は?流行ってるものはなに?災害が起こってないかな?素敵なニュースはある?みんなが幸せな世の中であるといいな。
一年後のわたしは、どうなっているだろう。
体調は大丈夫?どこに住んでる?仕事は相変わらずやっていけてる?最近は何してる?ハマってるものは?好きなあの歌手は今でも推してる?何よりも健康第一、身体が資本だよ。楽しく過ごせていればいいな。
一年後のあなたは?
元気?どこにいる?なにしてる?毎日楽しく過ごせている?なにか変わったことはある?あなたから見てわたしはどう見えてる?変わったかな、変わっていないかな。今の私にはわからないけれど、一年後もその先の未来でも私の隣にいてくれるのはずっとあなたであるといいな。
出逢いは少し肌寒くて、でも陽が暖かいそんな日だった。
第一印象はあまり良くなかった。ちょっと清潔感に欠ける見た目、ぶっきらぼうな態度、厳しい目つき、抑揚のない声色。何をやっても怒られそうだ、この人とは関わるのはやめよう、と初日にして思ったものだ。
それから少しして、仕事の都合で2人きり。あぁなんてことだ、絶対怒られないようにさくさく働かねば、気を遣って先回りして動かねば、なんてことを考えながら書類を書いていると私の作業をじっと見ているその人。やばい、何かやらかしたか、ええいとりあえず謝罪だと思いなんの脈絡もなく「すみません急ぎます、あ字汚くて読めないですよねほんとすみません頑張ります」なんて口早に伝えると「いや、そんなことねぇよ、全然きれいじゃん、字。俺のほうが汚ねぇし。焦らなくていいから、ゆっくりやろ。」
いわゆる毒親と言われる両親から、何をやっても中途半端 、頑張りが足りない、一番じゃない、下手くそ、駄目、と小さい頃から否定され続けた私にとって『字がきれい』というあの人の言葉はこれまでの人生で誰にも、両親にすら言われたことのないほどの最上級の称賛だった。認められた気がした。受け入れられた、そんな気持ちになった。私の心はまるで春爛漫。たったその一言で文字通りすべてが輝いて見えたのだった。
他人からすると笑い話だろうが、わたしはあの日の出来事を、一生忘れないだろう。
あの夜君は泣いていた。
星空のきれいな夜だった。
全てに絶望し、悔しくて、苦しくて、辛くて、死にたくてたまらない涙だったかもしれない。
君のその泣き顔はとても可哀想で、そしてなぜだかとても美しかった。僕はただ、見つめていた。
君の眼からまた星が溢れた。
僕はただ、見つめることしかできなかった。
陽の光の眩しさに少しずつ覚醒する意識。まだ眠たい、少し気を抜けばまた瞼がくっついてしまいそうだがそんな誘惑に打ち勝とうと身体を起こす。
ふと視線を少し横にずらすとそこには私の最愛。普段真面目な顔ばかりしているのに今だけは緩んだ素の顔がよく見える。まつげ長いな、なんてつい見とれていると彼も光が眩しかったのかぐんぐん眉間が寄っていき見慣れた顔が見えてくる。おはよう、と声をかけるとまだ半分寝ぼけてるのかしかめっ面をしていたが覚醒してきたのか私の目を捉えると急に柔らかい表情を見せる。目と目が合う。安らかな瞳が私を掴んで離さない。
「おはよう。」
あー、私今とっても幸せ。