明けない夜はない、とよく聞くが、明けないのではないかと思うほどの長い夜と、明けて欲しくないと思うほどの短い夜は存在する。
同じ夜でも焦げパンとジャムパンくらいの違いはある。
私は大切な人を想う時、明けないでほしいと思う夜が増えますようにと願うことがある。
大人の醍醐味は大抵の出来事を忘れずに覚えておけることだ。
だからこそ、忘れられない瞬間が、記憶にしか収められない瞬間がありますようにと願う。
そんな瞬間が、長く苦しい夜を救う時があるからだ。
しかしまあ、焦げパンにジャムを塗って、泣きながら食べる時も、まあそれも人生。
-静かな夜明け-
無条件で愛されたことのある人の強さは確かなものだと思う。
人でも良いし、動物でも良い。
ああ、貴方は私のことが大好きなんだと思えた時から、人の強さは何倍にもなる。そう信じている。
育児をして親が強くなるのは、子供に無条件に愛されるからだと思う。
私が強くなれたのは、ベビーシッターをしていたゆうちゃんのおかげだと思う。
愛されて強くなれるのは、愛された分同じくらい愛したいと心が叫ぶからだと思う。
-heat to heat-
永遠というものはないのに、永遠という言葉があるのはすごいことだ。
永遠なんてないけど、今を信じてもいいでしょ?
永遠なんてないから、今を信じるんだよ。
-永遠の花束-
5つ見えるものを確かめて
4つ聞こえるものを確かめて
3つ触れられるものを確かめて
2つ匂える香りを確かめて
1つ何かの味を確かめて
全てを確かめて、ようやく私が今存在していると感じた。
そうして今生きていることを確かめないと寝られない夜が何度かあった。
変化が怖かった。
どこに向かうかわからない未来が怖かった。
何より、怖がることに疲れていた。
疲れて、確かめて、私は今どうしようもなく1人なのだと思い知った。
それがとてつもなく寂しかった。
-寂しさ-
たまたま同じ病院で生まれて、たまたま家が隣で、そこから今まで22年の仲の幼馴染は、今年元気な男の子を産んだ。
一年半ぶりに実家に帰って、ついでに(とても会いたくて)彼女と彼女の赤ちゃんに会った。
私たちの1番古い写真より少し小さい彼を抱っこしたら、何だか心が締め付けられた。私たちもこんなに小さく、こんなに手をかけられて、こんなに愛されて育ったのかと。
私たちが似てるのなんて笑うツボくらい。
私は今でも海外を飛び回るのが好きで、彼女は家庭の中に幸せを感じている。
こんなにも近いのに、何一つ同じ道を通ってきていない。
けれど、それでもただ彼女が呼ぶ私の名前に勇気付けられる。
彼女がいる私の人生が好きだと思える。
不思議な縁だし、その縁を気に入っている。
大人になってゆく。会えなくなってゆく。そしていつか死ぬ。
だけどこの不思議な縁は巡るなあと、私の顔を見て泣く彼女の愛息子を見てそう感じた。