たまに、たまにね。誰か私のことをわかってくれて、包み込んでくれる人を早く探して、2人でどこか遠くの世界の端っこで暮らしたいって思うの。
彼がいたら何もいらないって思えるくらい、そのくらい大切な人と一緒にどこかに消えたい。
2人が消えたことが誰にも知られないくらい、そのくらい遠くて、地球の端っこにある所。
長い夢を見た。
途方もなく続く夢だった。
ああ、目覚めることはないのだ、と悟った。
体と心が分離して、魂が宙に浮いた様な、そんな感覚があったのを覚えている。
まるで、魂がこの体に閉じ込められている気がして、「ここから出して」と言わんばかりに、意識と共に遠のいてゆく。
長い長い夢だった。
しかし、夢の中を彷徨う時、何かの拍子に魂が押し戻された。
ここにいてはいけないのだと、誰かが言った。
宇宙を駆ける星の速さで、魂は来た道を流れた。
宇宙の黒を抜け、空が見えて、土地が見えて、だんだんと加速して、最高スピードで流れる中で自分の寝顔が見えた。
そして突然に目が覚めて、天井が見えた。
体は鉛の様に重く、頭はトリックアートの様に渦巻いていた。
目覚ましは30分後に鳴る予定だった。
暖房の風に吹かれて、バイクが走る音が聞こえた。
朝まであと少し、もう少し彷徨いたかったのに、また此処に戻ってきてしまった。
鏡の中の自分を、認められない時があった。
いつもどこかの誰かになりたくて。
なりたい自分を演じて映して、それを本当の自分だって思いたかった。
もしも自分がもう1人いたなら、あの時はあの子のことをすごく雑に扱っていた。
他人には人一倍気を使うのに、その優しさをあの子には向けてあげられなかった。
あの子のことは、どれだけ傷つけても大丈夫だって思ってた。
近過ぎて見えなかったけど、あの子も1人の人だった。
たくさん傷つけたから、すごくボロボロだったのに、分かってたのに、「私もう立ち上がれない」って、全てが手につかなくなるまで気づけなかった。
ああ、そうだった。
あの子は、私だった。
-あなたは誰-
私たちは、突然絶交した。
最後の最後に、私の本当の気持ちを書いた手紙は送らなかった。
初めて本音を書いた、少し棘のある文章だった。
優しさのベクトルが違うから、私は彼女の優しさに鈍くて、しかしまた彼女も私の優しさに鈍感だった。
いつ気づくかなって期待した私がバカだった。
でも今まで、彼女の優しさに気づけなくて申し訳なかった。
でもそれ以上に、私は傷つき疲れて、もう手放したかった。
私は彼女の大切にしているものを好きになれなかった。
そして彼女も私の大切なものを大切にできなかった。
終わらせるしかなかった。
終わらないと、始まれなかった。
2年間の長い夏だった。
彼女との時間は、夏を味わうには十分過ぎる蜜だった。
こうして私が秋を呼んで、彼女が私の夏と同じくらい絶望すればいいと思った。
どうしようもなく好きだった。
-手紙の行方-
大人はいいものだ。
大人は素敵なものだ。
学生の頃、よく周りの大人は"学生の私"を羨ましがった。
「学生時代はいいよな、人生の夏休みじゃないか!」と。
学生も学生なりに辛いことはあるが、大人ってそんなに楽しくないの?と不安だった。
なんだよ。なんだよ!!
大人、すごく楽しいじゃないか!
大人には大人の自由があって、不自由がある。
家賃も税金もカードの支払いも、そりゃちょっと大変だけど、
それでも、学生を羨ましがるほどつまらなくないじゃないか!
なんだよ、大人。素敵じゃないか。
もがいて悩んで、孤独の中で戦って、寝る前には過去の恥ずかしいことに苦しむけど、それでも後はただただ自分次第。
もうどこに行こうが私の勝手。線路の無い道は素晴らしい。
大人の私には、大人の私の目にしか映らない輝きがあるぞ。
猫の目に街、我の目に未知。
-輝き-