John Doe(短編小説)

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2/28/2024, 9:13:20 AM

イェーズス・ブライベット・マイネ・フロイデ


誰のせいでもない
誰かのせいにしたところで
何も変わらない
全部無意味だったの
あたしの日常はどことなく不安定だった
それは自分自身のせい

恐ろしいことに
あたしは全てを呪ってしまった
過去も未来も何もかも
そしてあたしの心は真っ黒に染まって
吐き出すことさえできなくなって
聖書も讃美歌も届かなくなった

私は呪い続けるだろう
他人とそして自分を
あたしの血液は工場の汚染水
あたしの涙は血の雫
あたしはいったいいつから壊れたの?
気がついた時にはもう遅かった

噛み合わない歯車
雪解けの道路
廃校の教室
寂れたコンサートホール
あたしの人生
あたしの希死念慮

ああ、イエスよ
あたしはどうすればいいのですか?
あなたの御元には居られないのですか?
チャペルの鐘が鳴るとき
あたしは一人画材や荷物を捨てて
手ぶらでどこか遠くへ消えて行く

2/23/2024, 10:53:09 AM

アウトサイド・ザ・ダークネス


久しぶりと言うべきかしら?
貴方とはもうずいぶん会ってなかったもの
どうでした?
どんな時間を過ごしましたか?
貴方の27年もの時間
私はずっと見守っていたの

貴方はとても勇敢だった
貴方は一人で戦っていたつもりみたいだけど
私はいつも貴方を見てたよ
貴方は私を遠ざけていたけれど
怒ったりしないわ
むしろそれが普通の感覚なのだから

これからのことが怖いのかしら?
心配しないで、私の後に着いて来ればいい
これから向かう場所は貴方の世界
貴方のかつての最初の安息の地
思い出したかしら?
もう何も辛くないでしょ?

そこには懐かしい人たちが居るわ
だから寂しくないよ
貴方の旅はここで終わりだけど
50年後にまた迎えに来るから
それまで少しおやすみ
お疲れ様、明かりを消しますね。

2/22/2024, 6:37:22 AM

シナーズ・フィート


もう誰も傷つけたくないんだ
もう誰も失望させたくないんだ
僕が何かを言えば、その言葉は凶器となる
『幻想』という名の殻に閉じ籠っていたい
もう朝日が見えなくたっていいよ
永遠に冷たい夜の世界に居るから

僕にとって光明は耐え難い苦痛
僕にとって優しさは神経毒
そっとしておいて欲しいんだ
利用するだけしただろう?
奪えるもの全て奪い尽くしたろう?
何が『救い』だ、もう止めてくれ

僕の人生は、ゆっくり崩壊していく
それを望んだのは他でもない僕さ
お姫様は居なかった、神様でさえ
お願いだよ
もう僕をそっとしておいてくれ
僕はあなた方に全てを差し出したろう?

いずれ絞首台へと登るのは僕自身の足なんだ。

2/20/2024, 12:06:01 PM

アンダー・ザ・シー(スーサイド)


少しずつ僕は沈んでいく
二度と浮き上がることはできない
この箱の中からは出られないんだ

でももう手遅れ
もうあの世界には戻れない
自分で決めたことだから

肺を水が満たしていく
これが苦痛で、これこそが僕
これが生きているということ

だけどもう僕は手遅れなんだ
これでいいんだよ、もう
僕の居場所はどこにもなかったんだから

やっと解放される
やっと安らげる
やっと笑える
やっと、やっと、やっと…

苦しい…僕は解放されたはずなのに
怖い…海の底は美しいはずなのに
寒い…ここは暖かいはずなのに
後悔している(もう手遅れだよ)
心の底から反省している(君がそれを望んだんだ)
助けてくれ…!(…)
誰か救いだしてくれ…!!(…)

2/19/2024, 11:53:12 AM

モダン・アート


僕に言えることは何もないよ
だって主導権は君が握っているんだから
僕ができることはただひとつ
君が望むものを差し出すだけなんだ
さあ、何でも言ってごらん

君はニューヨークのハーレムに住んでる
近代美術館のショーウィンドウの展示品
そんな綺麗で芸術的な世界に飛び出したんだ
君が望むものを差し出してあげる
さあ、何でも言ってごらん

僕は現代美術が苦手なんだ
でも君が好きなら僕も好きになりたいよ
僕は雑音が嫌いなんだ
でも君が鼻をすする音は我慢するよ
僕はいつも退屈してるんだ
でも君が居てくれるならそれで満足さ

水色の三角屋根の家のバルコニーでタバコを吸う
雄大な海を眺めながら、煙を吐くのさ
乾いた潮の匂いが心を安らげてくれる
そんな日常を君は望むんだね?
だったら僕はそれを君にあげなきゃ

僕は現代美術が好きになったよ
君はもう飽きてしまったようだけど
僕は雑音に慣れた
君はもう鼻炎が治ってしまった
僕は毎日が充実してると感じる
そして、君は僕の隣に居るけど不思議じゃない

今度、僕も現代美術に挑戦してみるよ
何を描くか、あるいは造るかは決めてないけどね

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