John Doe(短編小説)

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モダン・アート


僕に言えることは何もないよ
だって主導権は君が握っているんだから
僕ができることはただひとつ
君が望むものを差し出すだけなんだ
さあ、何でも言ってごらん

君はニューヨークのハーレムに住んでる
近代美術館のショーウィンドウの展示品
そんな綺麗で芸術的な世界に飛び出したんだ
君が望むものを差し出してあげる
さあ、何でも言ってごらん

僕は現代美術が苦手なんだ
でも君が好きなら僕も好きになりたいよ
僕は雑音が嫌いなんだ
でも君が鼻をすする音は我慢するよ
僕はいつも退屈してるんだ
でも君が居てくれるならそれで満足さ

水色の三角屋根の家のバルコニーでタバコを吸う
雄大な海を眺めながら、煙を吐くのさ
乾いた潮の匂いが心を安らげてくれる
そんな日常を君は望むんだね?
だったら僕はそれを君にあげなきゃ

僕は現代美術が好きになったよ
君はもう飽きてしまったようだけど
僕は雑音に慣れた
君はもう鼻炎が治ってしまった
僕は毎日が充実してると感じる
そして、君は僕の隣に居るけど不思議じゃない

今度、僕も現代美術に挑戦してみるよ
何を描くか、あるいは造るかは決めてないけどね

2/19/2024, 11:53:12 AM