花園
僕はお前らの大切なものを壊したい
何一つ不自由のないお前らにとっての日常が
僕にとっての地獄の日々と釣り合わないなんて
そんなの不公平じゃないか
本当の地獄を見せてあげるよ
お前たちが大切に育ててきた花園を壊してやる
一つ一つ丁寧に花を踏み潰してやる
毒薬もばら蒔いてやる
火炎放射機があれば消し炭にしてやれるのに
お前らは震えながら指を咥えて見てればいい
きっと僕は正気じゃないだろう
そうさせた原因はお前らにあるんだ
耳障りな笑い声を毎日毎日聞かせやがって
こうでもしなきゃ、お前らは静かにしないんだろ
地獄へようこそ
そしてお前らも僕と同じ苦しみを受けろ
平等になれ
汚くなれ
愚かになれ
こんな花園は灰になってしまえ
土曜日の朝
ある土曜日の朝のことだ。
ケイリー・ゴートゥベッドは目を覚ました瞬間からひどい自殺衝動に襲われた。
全身が鉛のように膠着し、なかなかうまく動かせないことに気付き、「もしや金縛りでは」と考えたが意識は確実に覚醒していたし、そもそも心霊的なものを彼女はいっさい信じていなかった。
彼女の身体は、いたって健康的だった。
毎週土曜日と日曜日は朝少し早く起きた後、近所をウォーキングするのが決まりだった。
でも、その日は違った。
なんとか上体を起こし、布団をはね除けると、ベッドの隣の小さな棚の一つから大量の睡眠薬と吐き気止めのシロップを取り出す。
睡眠薬はもともと不眠症を患っていたことでちゃんと医者からもらったものだ。
『ゴートゥベッド』なんて苗字で不眠症だなんて。
と、ケイリーは苦笑したのを覚えている。
医者は彼女のジョークを全く笑わなかった。
彼女は数十にもなる睡眠薬をすべて口に含むと、シロップで一気に流し込んだ。
これですべてが終わる、と彼女は再び布団をかけて眠ろうとした。
最初の数十分間は、あれこれ「私が死んだら家族は悲しむだろうな」とか「大学のレポート、まだ提出してないや」とか考えていたが、やがて意識が朦朧としてくると、彼女は眠ってしまった。
もうどうでもよかったのだ。
彼女はただ、静かに眠っていたかっただけだから。
土曜日の朝は、誰だって遅くまで寝ていたいもの。
射撃場
僕の立つ通路に明かりが灯る
僕はイヤーマフをつけてターゲットを操作する
数々の顔のない写真のターゲット
銃をリロードして、引き金に指を添えて構える
そして引き金を引く。
音速で射出されたホローポイント弾
ターゲットに命中して、顔の部分に穴が空く
そうして再び新しいターゲットを撃つ
撃つ
撃つ
撃つ。
一つはあの娘との苦い思い出。
一つは両親との決別。
一つは僕自身の痛み。
全ての弾を撃ち尽くすまで、僕はやめない。
ああ、でも一発は残しておかなくちゃ。
んん? 最後の一発はどうするかって?
こうするんだよ。
神様
神様?
きっといるでしょうね。
この世界で起きる説明のつかない、あらゆる事象は全部神様のしわざだと思えば納得でしょ?
神様は過去も現在も、そして未来も知っている。
世界が混沌へと少しずつ近づいていることを知っている。
あなたが人生を悲観して、今まさに命を絶ちたいと思っていることも知っている。
だから、神様はきっとあなたに罰を与えることはないから、安心していいよ。
「神様なんか絶対に信じない」?
仮に君が神様を信じたくなければ、それでもいい。
というか、信じたくないよね。
きっと神様は君の気持ちも分かってくれてる。
地球には痛みが多すぎて困るよね。
墜落
白いサマードレス姿の君は
何処からともなく現れる
僕を困惑させる
君は優しく僕に語りかける
「いつでも手助けするよ」
もううんざりなんだ
わかってる。自分でなんとかしないとね。
気が狂いそうだ
でも、それも終わる
僕が終わらせてやるんだ
ダイオキシンの世界
赤い絵の具と酸素
万華鏡を除くみたいに
頭の中で回転する
プールサイドから飛び込めばいい
影と波紋
サマードレスの君がいる
すぐそこに
身体が軽くなるよ
君に触れそうだ
そばにいてくれるよね?
ずっと
ずっと
ずっと。