終電
君はとなり街へと向かう電車に乗っている
月明かりの下、電車は走っていく
空は晴れ渡り、星くずがきらめく
君は不安に押し潰されそうになる
これで何度目の逃避行だろう?
乗客はまばらでみんな無関心
それでも電車は走り続けている
いつまでたっても到着しそうにない
いくつものトンネルを通過したはずなのに
むしろ街の明かりから離れていくようだ
静寂の世界へと入っていく
それが君を不安にさせるんだ
車内の電灯が点滅する
窓の外は黒一色、明かりは一つも見えない
それでも君は電車に乗っているしかない
もはや行き先なんてどうでもいいと思える
ただ、早く降りてしまいたいんだろう?
電車が減速しはじめる
目的地到着のアナウンスが流れる
だけど
降りた先が君の望む街とは限らない
恐る恐る降りてみると
あっという間に電車は闇の中へと消えていく
君はぽつんと月明かりの下に立つと
どこかへ向かって歩き出す
夜はまだ明けそうにない。
ファンタスティック・アドベンチャー
HPもMPもほとんど0からスタート
特別なスキルなんて持ってやしない
みんな冒険者として勇ましく旅立つけど
怖くて仕方ないんだ、ワタシは弱虫
小さな鳥かごのような部屋の片隅で
自分の情けなさに涙が溢れた
だけど「変わりたい!」と思うなら
ドアを開けて外に出なきゃダメなの
ワタシは一人じゃないんだ
だってみんな同じように戦っている
武器も防具もまだ身につけてないけれど
ちっぽけな魂を燃やして進んでやる!
傷だらけになれば薬草を食べればいいんだし
世界は目まぐるしく移り変わっていくんだ
ワタシが生まれてきた意味、よく分からないけど
冒険が終わってクリアしたとき、何か分かるはず
大好きな人に会えるかもしれないし
掛け替えのないものを得られるかもしれない
この不思議な世界で、ワタシは戦う
エヴリバディ・スイング
小難しいことは考えないで
いろいろと嫌なことはあるだろうけど
ずっと抱え込んでいたんじゃ前に進めない
頭の中を軽くしてあげることも大切だ
部屋を明るくして、陽気な音楽をかけよう
さあ、何も考えずに今は踊ろう
さあ、私と踊りましょう
下手でも構わないから、身体を動かすんだ
さあ、私と踊りましょう
ほら、心が明るくなってきただろう?
実は幸せはあちこちに転がっているんだよ
それに気がついて、拾うことができたなら
君は自分が幸福だということを知るはずさ
太陽が空のてっぺんで輝くように
君は光を受けて輝きはじめるのさ
さあ、みんなも踊りましょう
全員で身体を動かせば、もっと楽しくなる
さあ、みんなも踊りましょう
ほら、幸せな気持ちになってきただろう?
小難しいことは考えないで
いろいろあるんだろうけどさ
今はスイングして、楽しもう
さあ、君も踊りましょう
みんなで一緒に踊りましょう
さあ、私と踊りましょう
みんなで一緒に踊りましょう
さあ、あの子も踊りましょう
みんなで一緒に踊りましょう
アイデア
たとえばの話だ。
人生が常に幸せなものでありたいとみんながみんな思うんならだ、脳内の幸せ信号を発信する薬にどっぷり漬かってれば、きっとそれでみんな幸せさ。
世界中から争いは無くなるだろうし、他人を見下す必要も無くなるだろう。
心の闇も吹っ飛んで
「あーあ、なあんで僕は苦しんでたんだろ。世界はこんなに美しいもので溢れているのに。あはは、実に愉快だ」
なあんてことになるんだろうさ。
つまり、人間は脳の電気信号がすべてなんだな。
食欲も性欲も睡眠欲も、脳の指令に過ぎない。
至って普通の動物だね。
だけど、人間は少し賢すぎたんだなあ。
理想の社会を築くためにあまりにも多くの血が流れたし、やっと平和が実現したかと思えば政策やら窮屈な社会構造のせいで新しい苦痛が生まれる。
僕は戦争は狂ってると思うけど、格差社会のこの世ももっと狂ってると思うんだな。
人間はみんな狂ってる。
もしも、すべての苦痛を消す魔法のような薬があったら、僕なら迷わずそれを取るね。
そして意識が混濁しているなかで夢か現実かの狭間でこの世をおさらばするだろうさ。
僕は別に世の中を悲観しているわけではないよ。
ただ、生きることはすごくすごーく疲れる。
僕がたまにやる遊びを教えてあげるよ。
画用紙にヘタクソな地球の絵を描くと、それを真っ黒な油性マジックでグルグルに塗ってやるんだ。
君もやってみるといい。
何?お前はいったい何者なのかだって?
ごあいさつだな、君は。
僕は単なる君らのアイデアだよ。特別じゃない、ありふれた、誰もがふと思い付くような。
胡蝶の夢
すべての人間が目障りだった。
僕は夢の中では自分だけの帝国を築く。
そこには僕以外の人間は誰一人登場させない。
美少女を登場させたりもした。
でも、結局人形みたいな彼女に恋はしなかった。
僕はこの夢の世界が好きだ。
雲一つない青空に飛び込みたくなる。
無人の繁華街を散歩してみたくなる。
誰もいない学校の校舎。教室。廊下。グラウンド。
意味はないけど銀行強盗をしたこともある。
海辺で静かに本を読んだことも。
現実はくだらない。
どんな悪夢も、現実よりはマシだ。
神様、僕を捕まえてごらん。
この場所では僕の思うがまま。
夢から覚めるには死ねばいい。
僕のお気に入りは高層ビルから飛び降りること。
墜ちている間、穏やかな気分になる。
きっと現実ではこうもうまくはいかない。
現実の死はくだらないものだと思う。
覚えていないだけで、何度も死を経験したはず。
もしかしたら現実なんてないのかもしれない。
そんなことを考えてたら。
気がつくと見慣れた部屋、ベッドの上。
目覚ましのアラームを止める。