John Doe(短編小説)

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終電


君はとなり街へと向かう電車に乗っている
月明かりの下、電車は走っていく
空は晴れ渡り、星くずがきらめく
君は不安に押し潰されそうになる
これで何度目の逃避行だろう?
乗客はまばらでみんな無関心
それでも電車は走り続けている
いつまでたっても到着しそうにない
いくつものトンネルを通過したはずなのに
むしろ街の明かりから離れていくようだ
静寂の世界へと入っていく
それが君を不安にさせるんだ
車内の電灯が点滅する
窓の外は黒一色、明かりは一つも見えない
それでも君は電車に乗っているしかない
もはや行き先なんてどうでもいいと思える
ただ、早く降りてしまいたいんだろう?

電車が減速しはじめる

目的地到着のアナウンスが流れる

だけど

降りた先が君の望む街とは限らない

恐る恐る降りてみると

あっという間に電車は闇の中へと消えていく

君はぽつんと月明かりの下に立つと

どこかへ向かって歩き出す

夜はまだ明けそうにない。

8/24/2023, 2:47:50 PM