John Doe(短編小説)

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胡蝶の夢


すべての人間が目障りだった。
僕は夢の中では自分だけの帝国を築く。
そこには僕以外の人間は誰一人登場させない。
美少女を登場させたりもした。
でも、結局人形みたいな彼女に恋はしなかった。
僕はこの夢の世界が好きだ。
雲一つない青空に飛び込みたくなる。
無人の繁華街を散歩してみたくなる。
誰もいない学校の校舎。教室。廊下。グラウンド。
意味はないけど銀行強盗をしたこともある。
海辺で静かに本を読んだことも。
現実はくだらない。
どんな悪夢も、現実よりはマシだ。
神様、僕を捕まえてごらん。
この場所では僕の思うがまま。

夢から覚めるには死ねばいい。
僕のお気に入りは高層ビルから飛び降りること。
墜ちている間、穏やかな気分になる。
きっと現実ではこうもうまくはいかない。
現実の死はくだらないものだと思う。
覚えていないだけで、何度も死を経験したはず。
もしかしたら現実なんてないのかもしれない。
そんなことを考えてたら。
気がつくと見慣れた部屋、ベッドの上。
目覚ましのアラームを止める。

8/20/2023, 1:00:10 PM