ただそこにある青
空が青い。
でも、空気中は汚染物質が漂っている。
海も青い。
でも、人は海の中で生きてはいけない。
地球は青い。
でも、あの青の下では血が流れている。
ただそこにある青。
何も知らなければ、本当に綺麗な青。
でも、それは残酷な青。
コールド・マン
『嵐が起きたようだ』
大都市に住むコヨーテのように、私は孤独だった。
いつの間にか嵐がやって来た。
遠い地球の裏側で、嵐は人々の生活を奪っている。
それでも世界はまわる。
絶えず太陽と月は追いかけっこをする。
『それでも世界は美しい』
私は憂鬱だった。
そして、冷酷。
自分のことにしか興味がない。
他人を思いやる気持ちなど、持ち合わせていない。
『コールド・マン』
孤独は冷酷にさせるのだろうか。
冷酷が孤独にさせるのだろうか。
私にはどうでもいいことだ。
『腹が減った』
夜食は買ってきたまずいサンドイッチとコーヒー。
野良猫の糞尿の臭いがする部屋。
レディオヘッドのベストアルバム。
タバコを吸う。
『特別な存在になりたい』
考えてみたが、人生は退屈なゲームだ。
これといって楽しいことはほとんどない。
それでも社会の奴隷のように奉仕活動。
生きてくため。
『生きてくためさ』
私は、負け組。
少なくとも幸福とは程遠い生活。
私が知らないだけで世の中はもっと悲惨だろう。
死ぬのは馬鹿馬鹿しい。
『死ぬのは馬鹿馬鹿しい』
指をピストルの形に折り曲げて、こめかみを撃つ
通常運行
私は極めて冷静だった。
体調は整っていたし、腹は減っていなかった。
しっかり眠れたし、これといって問題は全くない。
ただ、目の前に広がる光景だけは受け入れ難い。
赤。
部屋一面真っ赤の。
それは本当に美しく、残酷な通常運行。
大人の夢
大人になれば、何でもできると思っていた。
誰もがたくましく生きていけると思っていた。
大人は本来完璧なはず。
でも、そうじゃなかったみたいだ。
憧れていた酒は気持ち悪くて飲めなかった。
憧れていたタバコは何もカッコ良くなかった。
免許を取っても車になんか乗りたくなかった。
異性と恋をしても疲れるだけだった。
鏡を見てみろ。
目の前のやつれた、弱々しいその姿がお前が夢見ていた『大人』だ。
日々のストレスを引きずり。
引きこもるようになり。
何もかもが破綻した今のお前は。
今のこの自分が、大人だって?
悪い冗談じゃないのか?
本当の自分はまだ幼い子供で、きっと悪夢を見ているに違いない。
なあんだ、ただの夢だったのか。
こんなヤツが、ぼくのはずじゃない。
ぼくはまだ、こども。
そうだよね。
そうだといってよ。
ああ、はやくがっこうにいかなきゃ。
せんせいが。ともだちが。
ぼくをよんでる。
だれか、たすけてくれ
もう一度生まれてきたら
もう一度生まれてきたら
まず君に会いたい
もう一度生まれてきたら
悲しませたことを、謝りたい
もう一度生まれてきたら
今度は前よりもっと優しい人になりたい
もう一度生まれてきたら
私を支えてくれた人達に感謝したい
もう一度生まれてきたら
自分の限界を決めつけず、ただ前進したい
もう一度生まれてきたら
空が青くて、星が輝いていたことを確かめたい
もう一度生まれてきたら
もう一度生まれてきたら
君を傷つけずに、守ってあげたい
だから、私にもう一度チャンスをください。