私は、私だけという亡霊に
酷く取り憑かれていた。
最初は、砂時計のように
サラサラと溜まり込んだ不満や
吐き場所のない思いだった。
砂は湿り、重みを増して
私の苦しみは蓄積した。
そのうちに、心まで蝕まれた。
私が私を追い詰めた結果だった。
そうして、そのうちいつか
自分に向けていた刃を
他人に向けてしまうのではと
こわくなった。
自分を守ること
自分を大切にすること
それを、自分に許可してあげること
そうすることで、少しずつゆっくりと
砂は乾き、時間は再び動き出した。
けれど、あの苦しさは忘れない。
もう二度と囚われないためにも…
【お題:私だけ】
3年、5年も経てば
時間の早さに、随分と驚かされる。
辛かったこと
嬉しかったこと
苦しかったこと
幸せだったこと
その時々の場面で
比重の重たかった方が
深く記憶に残るのではないかと思う。
そうして、人生は上手いこと
多少の差異はあれど
最期には、帳尻が合うようになって
いるのかな。
今までが、楽しいことばかりだったから
不幸が訪れるというわけでは無いけれど
長く、花の咲かなかった人は
それだけ沢山の雨風に耐えてきた時間だけ
地中で、根を伸ばし続けてきたんだ。
雨がやめば、必ず花が咲く。
私もそう信じているうちの1人だから。
その根本には、最初の種がある。
それこそが、遠い日の記憶かもしれない。
【お題:遠い日の記憶】
早朝の、薄青の空に
取り残されたような、小さく欠けた白い月。
目に見えるのに
当たり前じゃない場所にいるんだね?
名前も、夜の姿も
知っているのに…埋まらない距離。
誰かさんみたいじゃないかと
少し笑ってしまった。
【お題:空を見上げて心に浮かんだこと】
終わりにしよう
なんて、簡単に。
終われないことの方が
多いでしょう。
どれだけ、慎重に
終わりを受け入れたところで
スパッと、切りきれなかった
想いは ジワジワと滲む。
きっと あの人もこの人も
通りすがりの誰かも
幾つかの古傷や、まだキツい痛みを
伏せていたりするんだろう。
街の雑踏 開いた傷口
終わりにしよう。今日も何処かで
その言葉が 誰かのもとに届いている。
【お題:終わりにしよう】
手を取り合って
誰と、何処へ向かおうか。
幼い頃に、握りたかった手は
私の低い目線からでは
顔が見えず、その手の感触だけで
父だと、わかった。
そうして、多感な時期を
迎えるよりも随分と早くに
私は、頼れる温かな掌を握る事が
出来なくなった。
そうして、世代は移り変わり
本来ならば、手を取り合って育てるべき
わが子たちの、温かな手を
私は、ひとりで包み込んでいる。
この命より尊い、温もりが
心の中では不変であれ
いつか、見守るべき時の訪れを
私は、知っている。
だからこそ、今は沢山沢山
手を繋ごう。
私が欲しかった分まで
何もかもを、注いでゆこう。
【お題:手を取り合って】