2人並んで、エプロンつけて
好きな料理をつくろう。
換気扇の回る音
ガスコンロに火が点る音
何気ない会話に、笑い声と。
日常の、ちょっとした時間が
こんなにも、幸せにゆるく溶けて
心地良いのは。
君が居るおかげ。
君が奏でる音も
君と奏でる音も
幸せだなと、感じるよ。
【お題:君の奏でる音楽】
一面のひまわり畑の合間から
彼女の、少し大きな麦わら帽子が
見える。
ひまわりの葉のように、濃い緑の
リボンが巻かれた、あの帽子は
彼女によく似合う。
俺は、この3年彼女を連れ出しては
沢山の写真を撮ってきた。
今もまた、レンズ越しの世界を
美しいままで…と シャッターを切る。
『いよいよ…最期かもしれないの』
昨夜、残念そうに悔しそうに
だが気丈に彼女は…俺に告げた。
この3年で、彼女は徐々に
儚く白く細く…確実に痩せていった。
力加減も分からなくなるほど
華奢な身体を、何度も抱きしめた。
少し遠出になる外出も
辛いはずなのに…
『私、ひまわりが1番好きなの』と
麦わら帽子を、抱えて微笑む彼女に
行かないとは言えなかった。
ひまわり畑から、顔を出した
彼女が、大きく手を振る。
俺の最愛の人。
君は、この世で1番美しい。
【お題:麦わら帽子】
「終点です。」
その声に、はっと目を覚ます。
「随分と、お疲れ様のようで…」
少し困ったように、年配の車掌が
いつの間にか散らばってしまっていた
資料を拾い上げ手渡してくれた。
すみません!
そう、声をあげる前に
「身体に、気をつけて」と、何故か車掌は
意味深に肩をぽんと叩き去ってしまった。
まだ、寝ぼけているのか
見知らぬ駅だ。寝過ごして終点に
着くなんてここ最近じゃ、よくある事なのに。
ふらふらと駅を出ると…目の前には
黄金に輝く稲畑と、夕焼け空。
まだ、夢の中なのか?
沢山の赤とんぼが、舞い飛ぶ田んぼの中を
少年が無邪気に走り回っている。
ぁあ…と、膝から崩れ落ちる。
いつの間にか、涙が溢れて止まらない。
肩をぽんと叩いたのは
「父さん…」
田舎が、嫌いだった。
都会の暮らしに憧れて、がむしゃらに
働いた。何年も連絡ひとつしなかった。
最期に見た父さんは、見る影もなく
痩せていた。
その後も目的も見つからない
都会の暮らしにしがみついた。
だけど、本当に求めていたのは…
黄金に輝く稲畑に目を向けると
あの日の父さんが、遠くに立っている。
強く逞しく男らしいあの姿のまま。
「父さんみたいに、なりたかったんだ」
目を覚ますと、自宅の玄関に
倒れ込んでいた。
未だに、涙は止まらない。
俺は、徐に封筒を取り出し
徐に辞表と書き出した。
街での暮らしは、もう終点だ。
俺は故郷に戻る。
そこが、また新たな起点になると信じて。
【お題:終点】
良いことも、悪いことも
最初から決まっていた。
それを、運命と言うのだろうか。
運命に、振子のように右左と
振り回される。
それでも、何かを得ようと頭を使い
自分に問う。
これは、最初から決まっていたこと。
ただこれは、私の人生。
私は運命に持ち上げられた踊子ではないのだ。
最初から決まっていた事すら
気に食わなければ、後から変えてやれ。
どこまでも、しなやかに。戦え。
【お題:最初から決まってた】
あなたは、海であり太陽。
この星の力。
そのもののようなパワー
身体も心も人生すらも
冷えきった時に、命の熱さに
気付かせてくれる。
そうして、何度でも
踏み止まることができるの。
あなたは、私の太陽。
手が届けば、焼け落ちてしまう。
たとえ、どれほどの距離があろうとも
月夜に憂う、日々が続いても
あなたは、私の太陽。
きっとまた出会いたい、唯一無二の存在。
【お題:太陽】