NoName14

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一面のひまわり畑の合間から
彼女の、少し大きな麦わら帽子が
見える。

ひまわりの葉のように、濃い緑の
リボンが巻かれた、あの帽子は
彼女によく似合う。

俺は、この3年彼女を連れ出しては
沢山の写真を撮ってきた。

今もまた、レンズ越しの世界を
美しいままで…と シャッターを切る。

『いよいよ…最期かもしれないの』

昨夜、残念そうに悔しそうに
だが気丈に彼女は…俺に告げた。

この3年で、彼女は徐々に
儚く白く細く…確実に痩せていった。
力加減も分からなくなるほど
華奢な身体を、何度も抱きしめた。

少し遠出になる外出も
辛いはずなのに…

『私、ひまわりが1番好きなの』と
麦わら帽子を、抱えて微笑む彼女に
行かないとは言えなかった。

ひまわり畑から、顔を出した
彼女が、大きく手を振る。

俺の最愛の人。
君は、この世で1番美しい。


【お題:麦わら帽子】

8/11/2023, 3:19:40 PM