鈍い私は
自分の中にいつの間にか
芽吹いている、好きという気持ちに
気付くのがとにかく遅い。
そして、ある日突然に
衝撃的に気付くのだ。
だから、初恋の日は
正直言って分からない。
好きな事に、気づいた日も
忘れてしまったけれど。
ただ、学生の頃のあの人が
初恋だったのかも知れない…
先にバスを降りる彼は
私の頭をいつもポンポンと撫でて
降りた。
冬の公園で、2人で少し長く話した。
私より薄着の彼は、上着をかけてくれたし
誕生日の日には、私の自宅に電話をくれた。
頑張れば、実る恋だったかもしれない。
けれどそれ以上お互いに
歩みよる事はしなかった。
私は、クラスメイトの子に
彼と仲が良いからと頼まれて
その子の代わりに告白の手紙を
渡したのだ。
こんな、漫画みたいな事があるのだなと
視界がぼやけて何かが溢れてしまう前に
恋心にも、そっと幕をおろした。
【お題:初恋の日】
願うだろうか。
もう、終わってしまうのに?
人々が、終わりの恐怖に
狂わずにその1日を安寧に過ごせるかも
分からないのに。
それこそ、自分自身も。
生きてるうちに、散々と願った事を
どれほど叶えられたかなとは
少し考えるかもしれない。
そうして、心地よく眠りたいな。
これは、お題で…きっと明日も明後日も
世界はあるだろうけど。
もう、終わってしまうことに
願いをかけるより
この世界で、自分が叶えられた事を
幾つも数えられる生き方は、今からでも
始められるんだよね。
【お題:明日世界が終わるとしたら、何を願おう】
母は強しというけれど
実際に、自分が母親になった瞬間から
毎日が不安の塊でしかなかった。
絶対的に、何があろうと
死なせてはならない。
我が子という、未知の生き物。
育児という経験値も何もないのに
手元には頼りになる情報もない。
ただ、手応えのない日々を必死に過ごし
我が子は、順調な様子で成長はしているものの
私は、それでも不安の塊だった。
そんなある晩、地震が起きた。
寝不足もピークで、何もかもが
辛い時期だった。
けれど、揺れたと思った瞬間には
布団を飛び出し
私は、眠る我が子を守る為に
覆い被さった。
咄嗟の行動だった。
幸い揺れも大した事はなく
私は、また布団に入り直した。
けれど、私の胸の中には
熱いものがひとつ。
君と出逢ってから、私は…
自分の命より大切な存在の意味を
知りました。
【お題:君と出逢ってから、私は⋯】
風が草原を撫でる音が
耳の横をかすめていく。
誰も来ない、静かな場所で
1人、その心地良さに次第に…僕は…
気がつくと
辺りは、暗闇だった。
居心地の悪さは、窮屈さと息苦しさがあった。
ここから出たいという本能が
強烈に体を突き抜け
少し温かいような
ぼくを覆う何かを必死になって叩いた。
次第にそれは、ポロポロと
崩れ落ち、真っ白な光が幾つも
差しこんできたんだ。
外に這い出た時には
それが、僕の抜け殻であったことを知り
背中の小さな翼に気付いた瞬間だった。
ふと、意識が戻る。
風は心地よく吹き抜けたままだけど
遠い昔の夢を見た気がする。
空を眺めると、雲が流れを変えて
次の街に向かう気流が見えた。
ゆっくりと立ちあがり
思い切り翼を広げ
久しぶりの地上との別れを惜しみながら
僕は空に戻った。
【お題:大地に寝転び雲が流れる/目を閉じると
浮かんできたのはどんなお話?】
ありがとう。
今月で、何年目の命日だったかな。
まさか、1番最初の親しい人との
お別れが、父さんなんて思わなかった。
今年、最初の墓参りに行った時は
雪でお墓が埋まっちゃってたね。
腰まで雪に埋まりながら
線香と、タバコだけ握りしめて
父さんの墓に触れた。
凄く晴れてたけど、雪が舞い始めたから
あぁ、来たねって分かったよ。
前の時も、いきなり土砂降りになって
虹が出てさ。
お化けが居るかなんて
知らないけど、父さんの仕業だと
思ってる。
こんなに、生きてて欲しかったのは
今でも父さんだけだよ。
『ありがとう』って、何度でも伝えたいよ。
けど、未だに直ぐ泣きそうになるから
今日は、このへんにしとくね。
お題【 ありがとう そんな言葉を伝えたかった】