風が草原を撫でる音が
耳の横をかすめていく。
誰も来ない、静かな場所で
1人、その心地良さに次第に…僕は…
気がつくと
辺りは、暗闇だった。
居心地の悪さは、窮屈さと息苦しさがあった。
ここから出たいという本能が
強烈に体を突き抜け
少し温かいような
ぼくを覆う何かを必死になって叩いた。
次第にそれは、ポロポロと
崩れ落ち、真っ白な光が幾つも
差しこんできたんだ。
外に這い出た時には
それが、僕の抜け殻であったことを知り
背中の小さな翼に気付いた瞬間だった。
ふと、意識が戻る。
風は心地よく吹き抜けたままだけど
遠い昔の夢を見た気がする。
空を眺めると、雲が流れを変えて
次の街に向かう気流が見えた。
ゆっくりと立ちあがり
思い切り翼を広げ
久しぶりの地上との別れを惜しみながら
僕は空に戻った。
【お題:大地に寝転び雲が流れる/目を閉じると
浮かんできたのはどんなお話?】
5/4/2023, 5:56:13 PM