お題 声が枯れるまで
今日は君に会いに行く約束の日。
鏡を見ながら身なりを整えここ最近は
外すこととなかったピアスを外して
この日の為だけにあると言っても過言では無いお気に入りのピアスを刺す。
鞄にはお茶と携帯と少し大きめのハンカチを。
久しぶりだな。1年ぶりか。
社会人になってから学生の時よりも1年はあっという間に過ぎていく。
テストや長期休みといった大きな区切りもなければ
特別思い出になることをしているわけでもないと言うのに。
そんなことを考えながら誰もいない部屋に向かって
いってきますと残して家を出る。
まだ早い時間だから少し肌寒い。
吐く息は白くふわりと空へ消えていく。
そうだ、最近出来たパン屋さんに寄っていこう。
君は最近のここらの事は知らないだろうから。
ここのパン屋のメロンパンがサクサクで美味しくてね。
最近ハマっているんだ。
お花も買っていこう。喜んでくれるといいな。
色々買い物を済ませ君との待ち合わせの場所に向かう。
もう来てるかな。
君はいつも私よりも先に到着してぼーっと時間を潰してたよね。
でも今日は私の方が先みたいだ。
去年もそうじゃなかった?変わっちゃったなぁ君は。私との約束忘れちゃったの?私を待たせるなんていつもしないのに。
誰もいない桜の木の下が待ち合わせ場所。
木の幹をそっと撫でながら
お待たせ
と呟けば堪えられない涙が零れ落ちる。
あぁ、何年経っても慣れないな。
やっぱり君は来ない。
何分経っても
何時間経っても
何日経っても
何年経っても。
止めようと思うほどとめどなく溢れてくる涙。
君は、もう居ないんだ、
痛いほど思い知らされる。
言ってたじゃない。今日この日、この木の下でって。
でも何回来ようと君はいない。
君の名前を何回叫んでも。
私がここでずっと泣いていても。君は来ない。
あ...あぁ............うぅ......
嗚咽とともに気持ちも涙も溢れ出てくる。
私は毎年ここで涙を流す。日が暮れるまで。声が枯れるまで。
ようやく涙がおさまったら
次はお墓参りに行こう。
花はもう萎れてきてしまっているし、
毎年、1日遅れてしまうけれど。
昨日が君の命日だから。
お題 すれ違い
下書き...✍️
お題 忘れたくても忘れられない
時間が無いので下書き...✍️
書けなかった日のお題って残しておかないともう書けないのかな...
お題 やわらかな光
真っ暗で何も見えない。
何日、何週間、何ヶ月?
どのくらいここにいるかも分からない。
暗くて狭い何も無い部屋。
だが度々お客が来る。
ゆっくりと重い扉が開き
ぼやっと光が差し込む度に暗がりに慣れた目が
眩しいと主張する。
そして小さな少女がそっと中へ入ってくる。
...また、来たのか。
このところ毎日、だろうか。
触ればすぐに崩れてしまいそうなおにぎりを持って
私のところに来る変わった少女がいた。
少女は笑顔で私におにぎりを差し出して私の前に座る。
そしていつものように楽しそうに話し出す。
私は、そっと頷くだけで特に何も話してやった事は無い。
だがその少女はそれでも楽しそうに楽しそうに話をする。
今日あったこと、昨日あったこと。
私が外の世界を知らないとでも思っているのだろうか。
私に教えるように、言って聞かせるように、
色んな話をする。
少女は私が話したいから。と言って来てくれているが概ね私のためだろう。
ここに来るのも容易ではないはずだ。
毎日、おにぎりを作っては大人の目を掻い潜ってここに忍び込む。
それだけでこの少女は本当に心の優しい人間なのだとわかる。
次第に私は少女が来るのが少し楽しみになっていた。
ここにいたってなんの代わり映えもしない真っ暗な世界があるだけだ。
楽しくなかったとしても、少し気晴らしにはなっていただろうが。
少女は私を怖がらない。
少女は何も知らない。
少女の優しさが、明るさが真っ暗な私を照らす。
だが、もう救われることは無い。
私の結末は決まってしまっているのだ。
だから、どうか今この瞬間だけは、その自分の結末を忘れて
このやわらかく、あたたかい光に包まれていてもいいだろうか。
お題 鋭い眼差し
はぁ......はぁ......
ゲホゲホッ.........はぁ...はぁ...
もう.........無理.........はぁ...はぁ...
自分の手は血で染まっていて自分の剣もまた血塗れだ。
だが目の前の男は自分よりも血塗れである。
何十、何百、敵を倒してきただろうか。
夜中中歩き回って敵を倒し、もう今にも意識が飛びそうだ。
なぁ、もう、もう今日はいいんじゃないか...
そう問うも男は振り返りもしなければ反応すら示さない。
そして迷いなくザクザクと薄暗い道とは言えないような山道を突き進んでいく。
はぁ......
止まる気配のない男に必死に着いていく。
もう、これ以上戦いたくないのに。今日はもう充分やったでは無いか。
明日でも遅くは無いだろう。
だがここではぐれては逆に危険だ。
待てよ...!
立っているだけで意識が飛びそうだと言っているだろう...走らせる...なっ...!?
急に立ち止まる男に体勢を崩す。
どうしたというのかその男がじっと見つめる先に目線をやれば今までとは比べ物にならないくらい大きな化け物が何やら食事中らしい。
よくよく目を凝らしてみれば食しているのは人、ではないか。
俺は今までの疲労、目眩など全て忘れるくらい一瞬で背筋が凍った。
だが隣の男は違った。
見なくてもわかる。殺意。殺意。殺意。
あつい。きっとアニメなら紫や黒や赤のオーラが見えるような、殺意を感じる。
男はこちらを見ず一言、いくぞ。
と。
その鋭い眼差しは自分に向けられたものでなくても
殺される、と思わされるようなものだった。
だがその瞳に魅了されたのもまた、事実だ。
俺は湧き上がる胸の高鳴りを抑えきれずに応えた。
おう!