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12/20/2025, 5:56:15 AM



お久しぶりです。


梶原唯月です。
霞と想の物語、まだ読んでいますか。
読めてしまっているあなたは、きっともう引き返せない。

僕は今も生きています。
呼吸をして、心臓を動かして、こうして文字を書いている。
それだけで、ひどく場違いな気がするんです。
本当は、ここにいるべきなのは僕じゃない。

彼らは死にました。
正確に言えば、死を選び続けた末に、やっと死ねた。
自分を愛するより、他人を壊れるほど愛してしまう人間を、
僕はあの二人以外に知りません。
だから僕は、幼なじみとして、そして取り残された人間として、死んだ二人のことを、何度も、何度も、ここに蘇らせています。

死を夢見て、死を追いかけて、
互いの傷を確かめるように抱き合って、
それでも「愛だ」と信じて疑わなかった二人。

あの結末が、救いだったのか、破滅だったのか。
僕にはもう、区別がつきません。
ただ――あまりにも美しくて、吐き気がしました。

まだ話していないことが多すぎる。
語っていないというより、
言葉にした瞬間、すべてが壊れてしまいそうで、
ずっと喉の奥に詰まったままなんです。

正直に言います。
早く全部ネタバレしてしまいたい。
あなたたちの中に、この二人を住み着かせてしまいたい。

もうすぐクリスマスですね。
祝福の日に、二人の「出会い」についての物語の断片を、紹介しようと思っています。
それは、想と霞からの贈り物です。

もっとも、それが本当に贈り物なのか、それとも一生離れない呪いなのかは、受け取った人にしかわからないでしょうけど。
逃げなくていい。
もう、遅いですから。


いつも読んでくれて、ありがとうございます。
それが救いなのか呪いなのか、僕にもまだ、わからないままです。
                   
                 「手のひらの贈り物」

12/19/2025, 2:42:38 AM

死んでほしい、と思うほど誰かに心を向けたことはありますか。
無関心ではいられなかった、その感情の行き着く先を、あなたは知っていますか。



「想、何を見ているの?」

「毒殺だよ。ボツリヌス毒素」

画面を撫でるように、彼は微笑った。

「スプーン一杯で、三百万人。筋肉は言うことを聞かなくなって、呼吸だけが取り残される。苦しいって思う前に、終わるらしい」

楽しそうですらあった。

「茜が望むならさ、僕は人殺しになれる」

息をするみたいに、簡単に。

「殺してほしい人、いるでしょ。母も、姉も、父も。誰も君を守らなかった。友達だって、平気で君を置いていった」

彼の声は優しい。だから余計に怖い。

「居場所を奪った人間はね、茜の世界に存在しちゃいけないんだよ。消えてもらわないと」

喉が詰まる。

「……想」

「大丈夫。僕が全部やる。茜は汚れなくていい」

その言葉が、私を包む檻みたいだった。

「……想の心の片隅で、殺すならいい」

震える声で、縋るように言う。

「でも、今の私は殺さないで。今の私を見て。ここにいる私を、ちゃんと」

彼は笑った。

まるで、それすら許可するみたいに。

                    「心の片隅で」

12/17/2025, 2:37:45 AM

自分の顔は好きですか?


クソッと叫んでーーガッシャン、乾いた音が響いた。鏡は粉々に砕け四方に散らばった。そのひとつひとつが、自分の顔を断片的に映しているのが腹立たしい。まるで、どの欠片にも「お前なんか嫌いだ」と言われているようだった。糸のように細い血の筋が割れた鏡の断面に沿って綺麗に模様のように滲んでいる。指の付け根から滴る赤い液体が、ポタポタト床に落ちて、小さな水滴を作っていた。心の奥で何かがカチリと音を立てて外れた気がした。それでも痛みを感じない。ただ、胸の奥が熱くざわついている。

明日も明後日も私は私を傷つけ続ける。
私の体という客体と私の魂という対象が、静かに終わりを迎える夢を、毎日のように見ている。
                    君が見た夢

12/15/2025, 4:06:39 PM

生きてきた中で一番嬉しかった言葉は何ですか?



いつもと変わらない教室。その窓の外で、散りきれなかった桜の残骸がはらはらと舞い落ちていく。雲一つない青空から、柔らかな風が教室に流れ込んだ。

「茜、帰ろう」

前の席にいた想は、相変わらず支度が早い。よほどこの教室に長居したくないらしい。

「……想!」

「さっき、何読んでたの」

教室の隅で、いつものように本を読んでいた私を、彼は不思議そうに見る。まるで未知の生き物でも眺めるみたいに。

「少女漫画だよ」

「?」

想は目を丸くした。

「かっこいい人と、かわいい人が恋愛するの。幸せなやつ。ほら……現実の私じゃ叶わないから」

「叶ってるじゃん」

「叶ってないよ」

「……俺、茜の“彼氏枠”から外された?」

「違う! 想はかっこいいからいいじゃん。私は……違うじゃん」

「かわいいよ?」

「かわいくないってば」

「かわいいよ」

「かわいくないってば」

彼の手を払いのけた瞬間、勢い余って私の手が想の頬に当たった。

「……ごめん」

想は少し寂しそうに視線を落とし、それでもそっと私の手を握る。

「茜。俺は、茜に出会えて幸せだよ」

その言葉は今の私にとっては眩しいくらい痛かった。

                  「明日への光」

12/14/2025, 3:45:53 PM

今を、生きていますか?




今日は、嫌な予感がしていた。
理由はない。ただ、こういう感覚は外れない。
朝の星座占いは最下位で、ラッキーアイテムの星のアクセサリーを身につけたけれど、胸元で揺れるそれは、ただ冷たかった。

雨が降り出す直前の、世界が息を止めたような空気。
私は足を速め、立ち入り禁止の林を抜ける。

誰もいない開けた場所に、想は立っていた。
そこに「いる」というより、もうこの場所に縛り付けられている影のようだった。

「……想」

「茜、どうして」

声は低く、輪郭が曖昧だった。

「戻ろう。話そう」

想は少し困ったように笑って、空を見上げる。

「僕はね、今日、星になるんだ」

「想!いい加減にして」

「……茜は嘘つきだね」

責める響きはなく、ただ静かだった。

「僕が悪い方に落ちていくとき、一緒に落ちてくれるって言った。忘れちゃった?」

言葉が喉でほどけて、何も言えない。

「ここには誰もいないよ」

風が林を揺らす。

「不安はね、僕にとっての最高の隠れ家なんだ」

少し間を置いて、こちらを見ないまま続ける。

「……茜、ごめんね」

その声は、降りはじめた雨に溶けて、どこまでが想なのかわからなくなった。

その瞬間、彼は足元を離した。
身体がふっと軽くなって、想は崖の方へ傾いていく。

「想——!」

私は反射的に腕を伸ばし、彼の腕を掴んだ。

「茜、離して」

「やだ、いやだ、やだ……!」

自分でも驚くほど幼い声だった。
小さな子どもみたいに、ただ拒むことしかできない。

想は、そんな私を見下ろして、
嬉しそうに目を細めた。

「茜、僕が死ぬときにさ、そんなぐちゃぐちゃな顔で泣いてくれるんだ」

雨と涙で滲む視界の中で、彼は穏やかに笑う。

「その顔、好きだな。もっと見たい」

胸が、壊れる音がした。

「僕が死んだあと、ぼろぼろになって、狂って、全部壊してしまう茜が好きだ、好きだよ茜」

感情をなくしたように笑う彼が愛おしく、美しいと思ってしまう私が憎かった。

                     「星になる」

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