死んでほしい、と思うほど誰かに心を向けたことはありますか。
無関心ではいられなかった、その感情の行き着く先を、あなたは知っていますか。
「想、何を見ているの?」
「毒殺だよ。ボツリヌス毒素」
画面を撫でるように、彼は微笑った。
「スプーン一杯で、三百万人。筋肉は言うことを聞かなくなって、呼吸だけが取り残される。苦しいって思う前に、終わるらしい」
楽しそうですらあった。
「茜が望むならさ、僕は人殺しになれる」
息をするみたいに、簡単に。
「殺してほしい人、いるでしょ。母も、姉も、父も。誰も君を守らなかった。友達だって、平気で君を置いていった」
彼の声は優しい。だから余計に怖い。
「居場所を奪った人間はね、茜の世界に存在しちゃいけないんだよ。消えてもらわないと」
喉が詰まる。
「……想」
「大丈夫。僕が全部やる。茜は汚れなくていい」
その言葉が、私を包む檻みたいだった。
「……想の心の片隅で、殺すならいい」
震える声で、縋るように言う。
「でも、今の私は殺さないで。今の私を見て。ここにいる私を、ちゃんと」
彼は笑った。
まるで、それすら許可するみたいに。
「心の片隅で」
12/19/2025, 2:42:38 AM