佐吉智明

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2/3/2024, 3:20:32 PM

10.1000年先も


貴方と一緒に奏でた笛の音

貴方と食べた宴の料理

貴方と見た桜の花

貴方の為に詠んだ和歌

貴方の前で舞った舞

貴方をかばった若い命

貴方の為に捕まった命


1000年先まで残るといいな

1/21/2024, 6:01:55 AM

9.海の底

遠い昔、貴方は海の底に沈んだ
夏椿のように儚い命
涙のようにまたひとつぶと
落ちて、堕ちて、おちて―――。

悔しかった
貴方と誓ったあの夢を
果たせずに別れてしまったことが
悔しかった
貴方のそばにいながら
貴方を支えてあげられなかったことが

聞こえますか
静かな月夜の笛の音
遠い昔、貴方と奏でた笛の音
一ノ谷の水は今日も冷たい

琵琶の音に乗って
いつまでも残ろう
もう二度と同じ過ちは繰り返さない
青い海に誓おう

静かに息をしよう
違う海に沈んでも
海の底はつながっている
海の底で会えるのだから

「さっさと首をとれ」

12/29/2023, 2:18:26 PM

8.みかん

つめたい。
ヒヤッとした感覚が、肌を通じてみかんから伝わってくる。
雪だ。
橙に色づいた甘酸っぱい雪。
それは体温にとけて、なくなる。
貴方を想う私の心のように儚い。

12/11/2023, 10:21:02 AM

7.何でもないフリ

何でもないフリをするのには慣れています。
貴方に心配をかけたくなかったから。
貴方に迷惑をかけたくなかったから。
一日中、何でもないふりをしていました。
心がぎゅうっと締め付けられて苦しかった。

「痛くなんかない」
転んでも泣きませんでした。
転んでも痛がりませんでした。
ただ貴方に心配されないように。
ただ貴方に迷惑かけないように。
ただただ惨めで虚しかった。

わたしの気持ちに気づいてください。
わたしの叫びを聞いてください。
一度でいい。
大好きな貴方に心配されてみたかった。
大嫌いな貴方に迷惑をかけてみたかった。

僕の心をこんなにも傷つけるなんて貴方は最低だ。
僕を苦しめる貴方なんて大嫌い。

でもそれ以上に、優しくて温かい貴方が大好きです。


そして貴方は言いました。
「なにを考えているの。」
答えなんて聞かなくても分かっているでしょう。
「何でもないよ」

12/8/2023, 1:55:31 PM

6.ありがとう、ごめんね

気を抜いたその瞬間、泣きたくなる。
君が消え去ったその途端、虚しくなる。
毎日毎日同じことの繰り返しで、なにも成長しない自分が腹立たしい。

いつもの日常がなんなのか分からなくなってしまった。
なんのために生きているのか。
人生に疲れてしまった。
そんな僕を元気づけるようによく君は言った。
「自分自身に感謝してね」

僕へ。
いつも一緒にいてくれてありがとう。
いつも色々なことをしてくれてありがとう。
当たり前のことが新鮮に思えます。
すべて君のおかげ。
本当にありがとう。
そして、いつも文句ばかりでごめんね。

考えてみると、「ありがとう、ごめんね」と本当に言える相手は自分自身くらいしかいない。
いつしか僕の前から消えてしまった君はどう?
あのとき君は泣いていたね。
「僕をひとりにしないで」
と。

大好きだよ。
いつも僕を元気づけてくれてありがとう。
いつも笑っていてくれてありがとう。
君のすべてにありがとう。
一緒にいてあげられなくてごめんね。
ひとりにさせてごめんね…。

いま、僕は君を迎えに行く。

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