佐吉智明

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9.海の底

遠い昔、貴方は海の底に沈んだ
夏椿のように儚い命
涙のようにまたひとつぶと
落ちて、堕ちて、おちて―――。

悔しかった
貴方と誓ったあの夢を
果たせずに別れてしまったことが
悔しかった
貴方のそばにいながら
貴方を支えてあげられなかったことが

聞こえますか
静かな月夜の笛の音
遠い昔、貴方と奏でた笛の音
一ノ谷の水は今日も冷たい

琵琶の音に乗って
いつまでも残ろう
もう二度と同じ過ちは繰り返さない
青い海に誓おう

静かに息をしよう
違う海に沈んでも
海の底はつながっている
海の底で会えるのだから

「さっさと首をとれ」

1/21/2024, 6:01:55 AM