佐吉智明

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1/31/2025, 1:41:12 PM

27.旅の途中

綺麗な空だ。
私は旅の途中。
人生という名の旅。
果てしなく長く、はかない旅。
私は道の無い路を進んでいく。
美しいものばかり。
涙が出てくる。

綺麗な空だ。
私は旅の途中。
夜空の果ての、その奥まで続く。
星の光が私を照らす。
風が私の頬をなぜる。
美しいものばかり。
――影が見えた。

「なにをしているの」
静かな声にささやかれる。
振り向いても誰も居ぬ。
妙にデジャヴを引き起こす。
私は君を知っている。
知っている。
知っている。

「私の旅は、君の旅。」

11/4/2024, 1:06:50 PM

26.哀愁を誘う

雨が降っていた。
落ちつく音だ、と君が言った。
そうだ、君が僕を見た最後の時も、雨だったね。
懐かしいね、と僕が言った。
図々しい。分かっている。
でも君は僕を見てただ微笑む。
なんで、そんなに穏やかな顔ができるの?
なんで、そんなに優しくしてくれるの?
なんで、僕を恨まないの……。

僕は、君を助けられなかったのに。
見捨ててしまったのに。

恨んでくれたほうがどれほどましか。


あの日も雨だったな、と君は呟く。
蠟燭の火が揺れる。

 泣かないでよ、
 僕は君に助けられたんだ。

気休め言わないでよ。嘲笑ってくれよ、なあ。

 雨でよかったよ。
 涙も雨も分からないだろう?

 だから、雨が綺麗じゃなかったか。

 そうだろう?

雨はなお僕らの頭に降り注ぐ。
綺麗だ、と思った。思えた。
泣いているのが君にばれてないといいな。

だって泣きたいのは僕じゃないんだから。





蠟燭の火が静かに消えた。

7/17/2024, 11:43:50 AM

25.遠い日の記憶

あの日のことを思い出す
わたしのふるさとは燃えている
ひとのこころは殺されて
からだが宙に浮いている
道に転がる得体の知れない黒い塊
炎に吸い込まれた我らの魂
銃声がすべてを飲み込んだ

やつらがはは、と啼いていた
こどもがわぁ、と泣いていた

ひつじがめぇ、と鳴いていた

7/13/2024, 12:57:06 PM

24.優越感、劣等感

ただ、ただ、鬱陶しい。
わたしがどれほど醜い人間か、思い知らされる。

まわりの人々より少し上を行っては、調子に乗って、上にいることを誇り、高笑いをする。

まわりの人々より少し下を行っては、疑心暗鬼に陥って、恥じらいを忘れようと、嘲る。

美しいといい。
ただ、ただ、わたしが努力できるのなら。

7/5/2024, 12:23:04 PM

23.星空

黒いシルクに埋め込まれた金銀のボタン
星空を閉じ込めた美しい硝子
遠くから聞こえてきた
懐かしいオルゴールの音

星空を眺めて思い出す
君と過ごしたあの日々を
遠くから聞こえてきた
お別れの汽笛の音

金銀のボタンの埋め込まれた黒いシルク
硝子に閉じ込められた美しい星空
遠くから聞こえてきた君の足音
あれ
思い出せないな

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