気がつくと視線があの子を追っている……気がする。
なんでだろう。
あの子になにか〝特別な感情〟があるのだろうか?
うーん。
そんなことないと思うんだよな。
そう首を傾げる。
でも、なんだかモヤモヤするんだ。
この都市に来たとき、特別な人は作らない。そう決めたのに、なんでだろう?
どんよりとした心持ちのまま、仕事場に戻った。
おわり
六七八、好きじゃないのに
「俺の、彼女になってくれますか?」
本当に思いもよらなかったの。
私を選んでくれるなんてミリもないと思っていた。
だから嬉しくて笑顔を向けて言ったの。
「喜んで!!」
そう言いながら正面から彼に飛び込む。彼はゆっくりと私を抱きしめてくれた。
私も彼に応えたくて彼の身体を強く抱き締める。
「ふふ、嬉しい……です」
目頭が熱くなって涙が溢れてきた。
嬉しくて、嬉しくて。
溢れる涙を止められなさそうだった。
土砂降りの雨のようにこぼれ落ちる。
この場所だけの雨が。
おわり
六七七、ところにより雨
「私も、だいすきです」
え?
心臓の音がうるさ過ぎて彼女の言葉が聞き取りにくかった。
でも、〝好き〟って言ってくれたような気が、する。
頬を赤らめながら見せてくれる笑顔は、とびきり可愛くて。
自覚してしまったからより可愛く見えてドキドキしちゃう。
でも勇気を振り絞って彼女にお願いを言った。
「俺の、彼女になってくれますか?」
驚いた表情の後に花が咲いたような満面の笑顔を向けてくれた。
「喜んで!!」
おわり
六七六、特別な関係
気になる彼。ううん、好きかもって思っていた彼から「君が好きです」って言ってもらえた。
私は、彼に好意を寄せている人をたくさん知っている。だから自分の気持ちを封印していた。
彼の迷惑になるのは嫌だから、遠くから彼を見ているだけでいいと押し殺していたの。
それなのに。
彼は私の手を取り、真剣な眼差しで見つめてくれる。その手は少し震えているように見えて、彼の気持ちが指先から伝わる。
バカみたい。
気持ちにフタをしていたことに呆れてしまう。
「私も、だいすき」
それを彼に伝えれば良かったんだから。
おわり
六七五、バカみたい
ザザーン、ザザーン。
冷たい潮風が俺と恋人の頬を撫でる。
俺は彼女の手を取った。
冷たくなった指先が絡み合う。
「あったかいですね」
ふふっと頬を赤らめながら俺に向かって笑ってくれる。
頬が赤いのは照れたからか、風の冷たさからか。
どちらの理由でもいっか。
可愛い彼女の笑顔が見られたんだから。
ザザーン。
聞こえてくるのは波の音だけ。
でも彼女の手が、その温もりがそこに居ると分からせてくれた。
おわり
六七四、二人ぼっち