彼女の笑顔が眩しい。
誰にも見せたくないくらいの弾けた笑顔を腕に収めて離したくないんだ。
「どうしました?」
腕の中に温もりを感じて、さらに強く抱きしめると、さらに嬉しくて、寂しくて、不安になる。
だってここは夢だから。
まだ俺は彼女に気持ちを伝えてないから。
腕の中にいる彼女から、向けてもらえる笑顔に胸が熱くなる。
この幸せな夢から醒める前に俺はもう一度彼女を抱きしめた。
おわり
六七三、夢が醒める前に
最初はいつだっけ?
守ってあげたいって思った女の子だったんだ。
ろうそくの火みたいに儚くて、消えちゃいそうで心配だったんだ。
彼女の勤め先も治安悪いしね。
でも聞いてみると、彼女はその〝悪い人たち〟に大切にされている子だった。
俺が心配する必要がなくて、少しだけ距離を取ろうと思ったんだ。
それなのに。
深夜、壊れた乗り物の前で途方にくれていた俺の前に来てくれたのは彼女だった。
凄くびっくりしたよ。
俺は職場の先輩にしか連絡してないんだ。
真っ暗の中にあるのは街頭だけで、真冬の寒さは、より独りを痛感させる。
そんな時、該当の下に笑顔の彼女が修理道具を持って現れた。
びっくりしたよ。
そりゃびっくりしたんだ。
「私に任せてくださいよぅ」
頼もしすぎる言葉も、君が来てくれたことも嬉しくて、胸が高鳴ったんだ。
おわり
六七二、胸が高鳴る
救急隊員として仕事をしていると、手を伸ばしても届かない瞬間がどうしてもある。
それに慣れることなんてないんだ。
胸に傷が残るけれど、それを乗り越えなきゃいけない。
この世界から不条理が無くなるなんてない。
それをひとつでも減らせるように、頑張るしかないんだ。
おわり
六七一、不条理
恋人は泣き虫で。
そこが可愛いんだけど、本当のところで泣かないんだ。
もしかしたら、俺に見せてないだけなのかもしれないんだけど。
だとしたら、彼女はまだ心の奥で辛いものを抱えているのかな。
それとも俺を信用できてない? いや、それは絶対ないな。彼女はそういう人じゃない。
涙でふと思い出す。
俺も親しい人を亡くした。
その時、どうしたっけ……。
ああ、俺自身が涙を見せていなかったな。
泣かない。
ううん、泣けないんだ。
いつか、彼女のそばなら泣けるといいな。
おわり
六七〇、泣かないよ
彼女と俺と、どちらが怖がりなのか。
ちょっと疑問に思ったけど、どうなのかなぁ。
ホラー関連なものは少し怖いんだけど、俺の彼女は当たり障りのないはずの悲鳴が事件性がありそうな悲鳴を上げるからなんとも言えないんだよね。
俺と彼女、実際に怖がりなのはどっちなんだろう?
おわり
六六九、怖がり