なんか見覚えのある水色の封筒を見つける。
どこから届いたのかも分からないけれど宛先は私になっていた。
送り主は書いていない。
直感で経年劣化をしていると理解してしまった。
そう、記憶していたの。
私は自分の文房具をまとめて収納していたボックスを開ける。
探す必要はない。
だってそれは一番上に置いてあったの。
ううん。
昨日買ってきて、そこに入れたから。
出てきたのは、封を開けていないレターセット。
それと手元にある手紙は間違いなく同じものだ。
手紙を開けて中を確認する。
見覚えのある筆跡は間違いなく私のもので。でも私はこの手紙を書いた記憶はない。
どういうことだろう。
内容に目を向けると涙が溢れる。
たくさんの文章に込められている「私は幸せである想い」。
大切なパートナーと一緒にいる。
大丈夫、独りじゃないよ。
そう背中を押してくれる手紙だった。
最後には十年後の日付と私の名前。
なんて不思議なことが起こったのだろうと首を傾げるんだけれど、こういう不思議が起こることは理解している。
だって本当の私は……。
――
それでもこんな手紙一つで幸せになれるなんて確信は持っていない。
パートナーか、どんな人なんだろう。
そして、未来の私はどんな思いでこの手紙を書いたのだろう。
そう考えながら、この手紙は誰にも見つけられないようにしまっておいた。
未来を自分に託して。
おわり
六四〇、一〇年後の私から届いた手紙
毎年毎年、恋人にあげているバレンタインのチョコ。
普通のチョコにしたり、ホットチョコにしたり、結構工夫を凝らしてた。
でも、そろそろネタ切れになりそう〜と頭を抱えている。
うーん、どうしよー。
……色々考えても何も浮かばない。
自然と天井を見つめる。
瞳を閉じて彼のことを考えた。
初めて会った時も、優しくしてくれて、いつの間にか目が離せなくなった人だということ。
まだ恋人になる前に、おすそ分けでプレゼントした手作りチョコアイス。
その瞬間、目がパチッと開いた。
チョコアイス。
そうだ、チョコアイスだ!
あの時あげたチョコアイスは会社の社長にお世話になったから、そのお礼で作ったものだ。
彼のために作ってない。
私はその瞬間に冷蔵庫の扉を開いた。
牛乳もある、チョコレートは当然買ってある。
お菓子を使うかもしれないと思って用意した生クリームもある。
これだ!!
彼のためだけに気持ちを込めてチョコアイスを作ろう。
あの時とは違うチョコアイスをね。
そんなことを考えながら、私は材料を取り出して作業を開始した。
あの時のチョコアイス。
覚えていてくれているかな?
分からないけれど、喜んでくれたら嬉しいな。
おわり
六三九、バレンタイン
気になる彼の先輩が、この場所に彼が困っていると教えてくれた。
「彼を助けてあげてくれる?」
そう笑顔で修理代を先に払ってくれる。
ちょうど手が空いているのは私だけで、私が彼をどう思っているか、知らない……よね?
「早く行ってあげて」
彼の先輩は私の心を見通すように柔らかく微笑んでくれた。
気づかれているのかもしれない。
だとしたら、私はこの人に背中を押されている、そう思った。
私は深呼吸をして心を決めて彼の先輩を見つめた。
「はい、行ってきます!」
私は急いで出かける支度をして職場を出て、バイクにまたがった。
待っててください、今行きます!
おわり
六三八、待ってて
抑えている私の気持ち。
もう止められないくらいに溢れていた。
どうしよう……。
私は自分の身体を抱きしめる。
力強く抱きしめていても力が抜けていくみたい。
伝えたい。
伝えたい?
ホントウニ?
伝えたい。
そんな気持ちが溢れて。
同時に涙も溢れてきた。
このままこの気持ちも零れ落ちてしまえばいいのに。
おわり
六三七、伝えたい
彼女と初めて出会った場所。
彼女と友達になった場所。
そしてここは、彼女を気になるようになった場所。
乗り物が壊れて動けなくなった。
ひとり自己嫌悪している時に現れてくれた彼女。
寂しいことは苦手だったし、本当にやらかしていたから、さらに落ち込んでいる時だったんだよ。
該当の灯りを背中に俺を心配する声。
にこやかに出てきた彼女は、いつもの無邪気さよりもキレイで、俺の胸が高鳴ったんだ。
あれからより遊ぶようになって。
俺が守りたいって思っていたけれど、自分の足で立てる程に強くなっていた彼女。
そこに寂しさはあるけど、頼もしさの方を感じて目が離せない。
自然と目が合うことも多くなっていて、いつしか彼女をひとりじめしたい。そんなふうに思ってしまった。
俺だけを見て欲しい。
それを彼女に、伝えに行こう。
俺は車を走らせた。
きっかけのこの場所から、彼女との待ち合わせの場所へ。
おわり
六三六、この場所で