恋人と海を見に来ていた。
風の音と共に波の音が心地良いい。
自然と隣にいる彼女の手を取る。
それに応えてくれるように俺の手を優しく繋いでくれた。
スローモーションのような時間が流れる中で、指の間に彼女の指が絡まっていく。
薬指のそこだけは金属がはまっている。
俺が贈った約束の指輪。
彼女は近いうちに家族になる。
いつか家族が増えれば嬉しい。
そうやって人々は紡いでいく。
たくさんの時間を重ねて。
おわり
六二八、千年先も
普段はこういうものに惹かれない。
特にアクセサリーみたいな着飾るものは興味がないと言うか、めんどくさいなーと思っちゃう。
おしゃれに興味がないわけじゃないんだけど、よくわかんない。
それなのに。
オンラインショップのダイレクトメールのおすすめに、水色の小さい花が集まったイヤリング。それが目に入った。
俺と恋人を繋いだ好きな色に小さい花が数個集まったイヤリングを付けた彼女を想像したら、愛らしさが増しているなと。
無邪気で、色素が薄い彼女。
着ている服も白や薄い水色を好んで着るから、それより濃いこの花のイヤリングは絶対に似合う。
そう思ったら、思わず手に取って会計を済ませてしまった。
ただ可愛い花のイヤリングと思っただけだったんだけど、オンラインショップに書いてあった商品タイトルは「勿忘草のイヤリング」で。
なんとなくで調べた花言葉がちょうど良くて胸が踊った。
青い勿忘草の花言葉は「誠実な愛」で。
俺が彼女に贈りたい気持ちだった。
おわり
六二七、勿忘草
心もとない椅子に座り地上を蹴る。
ふわりと前に進むと、重力に押されて元に戻って行く。
その重力は少しづつ力を失いゆっくりと静止する。
またゆっくりと地を蹴ってぼんやりと空を眺めた。
重力に合わせて空が動く。
少し目が回りそうだけど、嫌な気持ちを忘れさせてくれた。
あの人に惹かれていく気持ちも、この目眩と共に忘れられたらいいのに。
おわり
六二六、ブランコ
紆余曲折って言葉がある。
その言葉通りに色んなことがあって、一緒に暮らしていた彼女と家族になれました。
俺の記憶では彼女とケンカをしたことはないけど、怒られることや怒ることは何度かあった。
回数を増すほど注意は減って、一緒に笑って、抱きしめ合う時間が増えていったから、これで良かったんだなーと思う。
まだまだ旅路の果てとは言いきれないけど、俺ひとりの旅路は終わりだ。
先を歩いていた愛しい彼女が、くるりと振り返る。
太陽の光を背負って逆光になっているけれど、満面の笑みを浮かべているのが分かった。
これからは、彼女と共に旅を始める。
おわり
六二五、旅路の果てに
「これは……」
目の前にあるのはクリームソーダのサンプル写真。
よくある緑色の炭酸にバニラアイスが乗っているものではない。
薄い水色の炭酸にバニラアイスが乗っていて、細長い楕円形のホワイトチョコレートのプレートが左右に添えられてウサギさんみたいだ。
可愛い。
私の脳裏には気になる彼が過ぎった。
太陽のように笑うクリームソーダの大好きな彼。
私は写真を撮り彼へメッセージを送る。
『新しいクリームソーダを発見しましたよ!』
もしかしたら知っているかもしれないけど、知らないなら大切な情報だ。
喜んで、くれるといいな。
おわり
六二四、あなたに届けたい