「ゆ〜きやこんこ、あられ〜やこんこ」
恋人の愛らしい甘い声が白い世界に響き渡る。
犬だったら全力でシッポがブンブン振っていそうなくらいのご機嫌具合だった。
少し積もっているけれど、そんなの気にしないレベルで軽やかに足跡を付けながら歌っている。
個人的にはおっちょこちょいな子だから足元に不安だけど……と見ていると、
「あっ」
「あ」
ズベシャッと顔面から転んでいた。
雪が少し深くて良かった……。
そんなことを思いながら、起き上がった彼女は涙目で俺を捉える。
「雪の上は滑るに決まっているでしょー」
「だってぇ……」
俺はそう言いながら、彼女に手を伸ばして立ち上がらせた。
身体中にくっついた雪をはらいながら、怪我をしていないか軽く確認する。
「痛いところはある?」
彼女は両手両足を軽く動かして、ふわりと微笑んだ。
「大丈夫ですー!」
俺は彼女に手を差し伸べた。
「また転ばないように、ね」
彼女は嬉しそうに笑いながら俺の手を取る。
「はい、転ぶなら一緒に!」
無垢な笑顔で言うけれど、俺はもう転ばせないからね。
おわり
六〇一、雪
「今年もよろしくね」
「はい。これからも、よろしくお願いします!」
彼女は迷わずに〝これからも〟と言ってくれてビックリした。
もちろん、この先のことは考えている。
そういう相手だ。
でも、彼女から当たり前のように〝これからも〟という言葉が出てきて凄く嬉しかった。
そうだね。
これからも、君と一緒に。
おわり
六〇〇、君と一緒に
私の恋人は救急隊でお仕事をしています。
年末年始は毎年彼が仕事をしている。
そんな年末年始のお仕事が一段落したので、ふたりで日の出を見るために出かけた。
これは去年も一緒で、同じ場所じゃないけれど日の出を楽しめる宿を事前に予約しておいたんだ。
「……ちゃん、起きて」
身体を揺さぶられて目を覚ます。
大好きな人の声は心地よくてもう一度意識を手放そうとしてしまう。
「起ーきーて、朝日見らんなくなっちゃうよ」
強い声が耳元から聞こえてから、一気に目を覚ます。
そうだ!!
日の出を見ようと話していたんだ。
私は勢いよく身体を起こすと、苦笑いして上着をかけてくれる。
「おはよ」
「おはようございます」
優しく微笑んでくれる彼に胸が暖かくなった。
時計を見ると、まだ日の出にはちょっとだけ早い時間。
でもこれ以上遅くなると、見逃してしまいそうだった。
私は急いで着替えて、彼の隣に立つ。
カーテンを開けた窓から少しずつ光が少しずつ地平線から上がってくる。
冬の空は空気が住んでいて美しいという言葉がとてもあっていた。
手のひらに暖かいものが包まれる。私は隣にいる彼を見上げた。
優しい瞳が私を見つめてくれる。
「今年もよろしくね」
「はい。これからも、よろしくお願いします!」
ほんの少し、彼に驚きの色が見えたけれど、直ぐに眩い笑顔を見せてくれた。
おわり
五九九、冬晴れ
「ただいまー!」
これでお正月休みの仕事も一段落した日。
家に帰ると、ひょこっと顔を見せた恋人が嬉しそうな表情で俺に向かって走ってくる。
「おかえりなさいー、そして年末年始お疲れ様でしたー!」
「ありがとー、ずっとフォローしてくれたからだよー」
正面から抱きついてくれるから、俺もしっかりと抱きしめかえす。
これも俺たちの日課のひとつ。
些細なことだけど大切なことで、感謝は絶対に忘れたくない。
彼女も俺を尊重してくれるからこそ、〝ありがとう〟の言葉を大切にしたいんだ。
「明日からの旅行、楽しみですね」
「そうだね。旅行先じゃ、ゆっくりしてね」
「あなたの方こそ!」
ふふっと愛らしい笑顔を見せてくれて、胸が暖かくなる。
ああ、幸せだなぁ。
おわり
五九八、幸せとは
去年もこの時期はひとりだったな。
今は寂しいところだけれど、お正月休みが明けたらふたりで日の出を見に行くと決めている。
去年も行ったんだ。
ここからが私たちの新年初日の出ってことで、とても素敵な朝日が見られた。
それをふたりで思い出したから、事前に計画していたんだよね。
まだ忙しい日々が続くけど、落ち着いたらふたりで旅行。
そこで日の出を見ることで、私たちの新年を始めようと思ってる。
おわり
五九七、日の出