夏がようやく終わったなと思っていたのに、朝晩すっかり寒くなった。
俺にとっては嬉しい季節がやってきたと言える。
一緒に住んでいる恋人を抱きしめて眠れるんだ。これがまた心地よくって深く眠れるんだよね。
少し前までは暑くて、指を絡めるのがせいぜいだったんだけど、ようやく抱っこして眠れます。
ひとりでいた時は、疲れに疲れて疲れ果ててようやく眠れたんだ。
彼女を抱きしめて眠るようになってからは熟睡することが増えて、目が覚めた時のスッキリ感にビックリした。
そんなわけで、寒くて凍えるような朝が増えたけれど、俺にはそれが好都合だったりする。
おわり
五三四、凍える朝
先日、恋人の家に夕飯の招待を受けて、食べたハンバーグがとても美味しくてさ。
今まで食べたことがない美味しさで、胃袋を掴まれてしまったわけです。
もちろん彼女が作ってくれたからと言うのはあるんだけど、食感や溢れる肉汁が本当にたまらなかったんだ。
その日も、その後の日に会った時も、隠し味を教えてと言ってもナイショと笑うだけ。
暗闇にいる悪魔のようなシッポが見えそうな悪い笑みなんだ。もうズルいよね。
でも、もう一度だけと思って聞いてみる。
すると夏の日差しの眩しさを感じる笑顔を、俺に向けてくれた。
「これであなたの一番好きな食べものは〝私の作ったハンバーグ〟ですね」
おわり
五三三、光と影
彼女と出会った頃は、こんな感情を持つなんて思わなかった。
挨拶を繰り返すうちに、何度も偶然出会うたびにおっちょこちょいで怪我ばかりしている彼女に惹かれて行った。
俺の感情を無視して気持ちを強要する女の子が多い中、彼女だけが俺の気持ちを聞いてくれた。
寄り添ってくれたんだ。
独りで寂しいと思った時に、偶然来てくれた彼女に気持ちを抑えられなくなった。
この都市に来て、特別な人を作ろうなんて思わなかったのに。
みんな平等に〝好き〟でいたかったのに。
ダメだよ。
もう囚われているんだよ。
そして、この感情の先は……。
おわり
五三二、そして、
俺はとてもドキドキしている。
それというのも、初めて恋人の家に居るからです。
彼女はキッチンで準備してくれているんだけれど、めっちゃいい匂いー!
これ絶対にハンバーグだよね?
俺の好きな食べ物だって言ったことあるから、絶対そう!
仕事もハードだったし、この匂いはたまんないー。
匂いに空腹感が刺激されまくって、お腹がついに鳴りだした。
「お待たせしましたー!」
そう言われて出てきたのは、やっぱりハンバーグ。しかもプレートになっていて付け合せも俺好み。
形はちょっといびつだけど、本当に美味しそうでのとがごくりと鳴ってしまう。
「食べていい?」
「温かいうちに食べてください」
彼女は正面に座って、ニコニコ笑っている。
これは、感想を待っているな……。
ほんの少し緊張するけど、ナイフとフォークを取ってハンバーグを口に運ぶ。
噛むたびに溢れる肉汁もそうなんだけど、何か違う。ファミレスのハンバーグと違って肉々しい。
これは味って言うより食感かな?
ほんの少しコゲもあるんだけど、これも美味しい。
「凄く美味しい!!」
俺がそれを告げると彼女は弾ける笑顔になった。
「良かったぁ!!」
嬉しそうに微笑む彼女だけれど、どこか安心した表情するから、彼女も不安だったんだと思った。
「これ、普通のハンバーグと違う?」
そう聞きながらまたハンバーグを食べていると、照れたように答えた。
「ちょっとだけですよ」
照れたように笑う彼女を見て胸が熱くなった。
ああ、これは。
かなり工夫と練習したんだな。
手先が器用かと言われたら彼女はかなり不器用なタイプだ。それでも、これだけ美味しいハンバーグを作ってくれた。
俺が好きなものを。
初めて俺のためだけに作ってくれた手作りのご飯。
これって〝小さい愛〟でおさまる?
おわり
五三一、tiny love
キッチンでパタパタと走り回ってお皿を出す。
彼と想いが通じあってから初めてうちに遊びに来てくれる日になっていた。
元々は仕事の日だったのだけれど、どうしても彼の好きなものを手作りしたくて早退させてもらった。
いや、大げさって思われそうだけれど、料理が得意って訳ではないから時間がかかると思ったの。
彼の好きなハンバーグに付け合せと、ご飯と、彼と仲良くなるきっかけのクリームソーダ。
ハンバーグは数日前から練習していたから失敗はしないぞ。
あと、付け合せは子供っぽい食べ物が好きって言っていたから、ファミレスのハンバーグプレートにしたいかな。
クリームソーダも練習した。
バニラアイスもいいものを買ってある。
大好きな彼を想いながら、ひとつずつ丁寧に作ろう。
焼くのは彼が到着してから。
喜んでくれるのを想像しながら、彼が来てくれるのを楽しみにおもてなしの準備を進めた。
楽しみだな!
おわり
五三〇、おもてなし