私の恋人は救急隊員さん。
先月末あたりから、熱中の患者さんが増えているみたいで、家に帰るとぐったりすることが増えた。
そんな中でも普通に救助する方もいるから、単純に出動回数が増えて常に緊張してヘロヘロになっているって言ってた。
それでも私に気を使って家事を分担してくれる。
私も仕事をしているから助かるけれど、日に日に顔色が悪くなっていて、どうしようもなく心配になってしまう。
無理、して欲しくないんだけどな。
今のご時世的にそれは難しいと思う。
それでも。
私は彼が帰ってくる前に夕飯の支度や、お風呂の準備をしておく。
それと彼の特別大好きなクリームソーダも。
帰ってきたら、「俺がやるよ」とは言ってくれるだろうと思うけれど。
私は、この休みがない時だからこそ、ゆっくり出来る時間を確保したいの。
この気持ち、届いてくれたら嬉しいな。
おわり
四一九、届いて……
家に帰って、着替えてからリビングに向かう。
今日は時間調整で午前上がりだったし、彼女の特攻がないから、まだ家に帰ってないんだろうな。
そんなことを考えながらアイスが欲しくて、冷凍庫を開けると銀のバットの中に冷凍用の保存袋。そこには俺の名前が付箋に書いてあった。
「なんだこれ?」
俺はその保存袋を確認すると、どうやらチョコレートアイスみたいだった。
もしかして、手作りしてくれたのかな?
俺は冷凍庫を閉めて首を傾げた。
どうしよう。
勝手に食べていいのかな?
そうは思うけれど、俺宛の付箋のメッセージだから多分大丈夫とは思うけれど。
うちには、ふたり揃ってクリームソーダが大好きだから、アイスが必ず冷凍庫に常備している。
だから、この暑さでアイスが欲しいと、いつもなるんだけれど……。
すると、ポコンとスマホに恋人からのメッセージが入った。
『お疲れ様です。家にチョコレートアイスがあるので、食べてくださいね』
うわー。
俺の彼女はメッセージのタイミングはいつも絶妙で、今日もこのタイミングでのメッセージが来て相変わらず神がかっているとスマホに向かって拝んでしまった。
もちろん、お礼のメッセージは忘れない。
お礼を送った後、保存袋から少しだけとアイスクリームディッシャーでデザート皿にポンと置く。
キラキラと輝くチョコレートアイスに視線を向けてしまう。あの保存袋に入っていたということは、多分手作りだよな。
というのも、彼女と関係性の距離が縮まるきっかけは、彼女の作ってくれたチョコレートアイスからだった。
俺はチョコアイスをひとすくいして口に運んだ。
ああ、思い出す。
初めてチョコレートアイスを貰ったのは、まだ彼女の強さに気が付かなくて、彼女を守らなきゃと思った頃の話だ。
すぐ怪我をしていて、見ていて不安になる彼女だったんだ。
今は彼女はそばにいてくれて、愛しいと思える存在になってくれた。
何口か食べていて気がつく。
初めて食べた頃より、味がまろやかになっていて……美味しくなってる。
俺のために美味しくなるように頑張ってくれたんだなと分かって、自然と口角が上がってしまった。
うん、美味しい。
おわり
四一八、あの日の景色
「ねえ、なにか私にお願い事はありませんか?」
突然恋人に言われた一言にびっくりしちゃった。けれど、今日は七夕だからそういうことかなと思い直す。
彼女は両手に拳を作って、ムンッと気合いを入れていた。
ああ、これは何がなんでも俺の願いを叶えようとするなあ。彼女はそういう子だ。
「うーん」
一緒に暮らして、彼女と沢山の時間を過ごしたから今パッと思いつかなかった……のだけれど。
俺は彼女の腰に腕を回して抱き寄せる。
「わわっ」
「俺の願い事は〜」
戸惑う彼女にドヤ顔で言った。
「これからも一緒の時間を過ごしてくれる?」
言われた言葉に、彼女はクエスチョンマークを飛ばした顔になっていた。
「それはお願い事になりませんよ?」
「え?」
「一緒にいるのは〝当たり前〟じゃないですか!」
首を傾けながら、きょとんとした顔で俺に返す。
彼女にとって、俺と一緒に過ごすことは当たり前だと言い切れる彼女の気持ちに胸が暖かくなった。
「じゃあ、今日の夕飯は手作りハンバーグ食べたいです」
「喜んで作ります!! ハンバーグはお願いに来ると思ったんで材料も買ってあります!」
一気に目がキラキラと輝く。クルクルと変わる彼女の表情が愛らしくて、彼女を抱きしめた。
びっくりしたのは分かったけれど、ゆっくり彼女も抱きしめ返してくれた。
――
本当はね。あるんだよ、お願いは。
〝いつか家族になってね〟
ってことだったんだけど。
これは自分の力で叶えるから、ね。
おわり
四一七、願い事
最近、同棲している恋人のお気に入りがあるみたい。お休みの日になると〝お願い〟される。
「ごめん。三十分くらい膝貸してもらってもいい?」
両手を合わせて〝お願い〟される。
私はそれが結構好きなのです。
彼のお気に入りは、お客さんからオススメされたアロマオイル。その中からマリン系の香りを彼が気に入ったみたいだから、アロマオイルを使えるセットを買った。
今暑いし、火を使いたくないからアロマストーンにした。これだと範囲も狭いし変に充満しないから。
あとは配信動画で真っ青な空とトロピカルミュージックを流す。これが落ち着くんだって。
冷房をあまり寒くしないように調整してからソファに座って彼に膝を貸す。
私の膝枕が心地いいって言ってくれて、休みの人少しの時間にリラックスタイムとして、最近過ごしている。
今日のお休み時間にも彼の頭を私の膝に頭を乗せて、リラックスして無防備になった寝顔が私の癒し時間。
青空と海の動画からはトロピカルミュージックで軽やかな心持ちになりながら、愛しい彼の見ていると私も癒される。
ああ、やっぱり彼が好き。
おわり
四一六、空恋
最近、俺の中で流行っているものがある。
休みの日にさざ波の音と共にトロピカルな音楽をかけて。
彼女が買ったマリンの香りがするアロマオイルをアロマストーンにたらして。
寒くなりすぎない気温に冷房を調節して。
彼女の膝枕で仮眠を取ることです!
彼女には迷惑だとは思うのだけれど、これが本当に心地よくてさ。
最初は十五分くらいだったんだけれど、彼女も俺を甘やかしてくれるから、一時間くらいまで延びてた。
でもさ。
波の音は耳が癒されるし、彼女を思い出す香りはリラックスできるし、外の暑さを調整しているから五感の全てが心地好すぎて今年の夏はコレをやめられそうにない。
彼女は俺を甘やかすのが嬉しいとは言ってくれるけれど、秋までこの調子だったらどうしようと、俺は少しだけ不安になった。
ごめんね。
でも、休みの日の癒しタイムだから許してください。
おわり
四一五、波音に耳を澄ませて