もわんと湿度が高くて、服が身体にベタついてしまい不快指数が無駄に上がる。
空を見あげれば日差しは強くて手で顔に日陰を作るけれど暑さは増すばかり。
首から汗が身体に流れ落ちて汗を拭う。
「あづーい!!!」
「暑いですね」
「夏の気配が近づくどころか、既に居座ってるよ……」
ぐったりと頭を傾けると、滝のように汗が吹き出てきた。流石に不快過ぎて辟易していると頬に冷たいものが当たる。
「ひゃあっ、冷たっ!!」
「ふふ」
彼女の手からペットボトルを頬に当てられて、その冷たさに驚くと俺を見て楽しそうに笑う彼女が見えた。
「飲んでください」
「ありがとう」
彼女からペットボトルを受け取り、水分を身体に取り込んだ。
もう初夏なんて言えないくらい暑いから、熱中症には気をつけないとね。
おわり
四〇八、夏の気配
この先がどうなるのか分からない。
俺は今いる所から新しい都市に行く。
まだ見ぬ世界へ、旅立つんだ。
どんな自分になれるか分からない。
どんな出会いがあるか分からない。
やりたいことも見つけらるかも分からない。
それでも今、ここで燻っているよりよっぽどいい。
俺は前に進むんだ。
大切な人ができるかもしれない。
仲間かな。
家族みたいな人かな。
それとも、誰よりも愛しい人かな。
分からないからこそ期待がワクワクするんだ!
まだ見ぬ世界へ、歩きだそう。
おわり
四〇七、まだ見ぬ世界へ!
夕飯の片付けも終わったし、お風呂も入った。明日の支度は明日の私に任せましょう、とベッドへ先に入っていた恋人の上にダイブする。
「ぐえぇぇ」
「そんなに重くないー」
「ゆ、油断してた時に乗っかってきた……」
なんとも心許ないか細い声が布団の下から聞こえてくる。私はそのままベッドに入り込むと彼の腕が私の身体に絡みつく。
あったかいなあ……。
そう思って、私も彼の腕に自分の手を重ねた。
「おやぁすみぃ……」
それが、今日の彼が発した最後の声。
彼の体重が少し私に乗せられて、ちょっと重いけれど嬉しくて、私も瞳を閉じてしまった。
おやすみなさい。
おわり
四〇六、最後の声
恋から愛に変わる瞬間ってどんな時なんだろう。
彼女のことを好きになったのは、外見ではなくて、荒んだ心を優しく見守ってくれてたんだ。
それ以上に俺のことを大切にしてくれたから。
守りたいと思ったけれど、気がついたら俺の前にいて人の手を差し伸べられる人になっていて……。
ちょっとだけ尊敬してしまった。
でも俺は彼女の店には行かないようにした。彼女のお店で彼女と俺との関係をお客さんが茶化していて、困っている彼女を見たから。
だから修理が必要であっても別の会社に連絡して、彼女と顔を合わせないようにしたんだ。
その期間は少し長かった。
でもね、俺は会いたかったんだよ。
偶然でもいいから会いたいって何度も思ったんだ。その気持ちを〝今が楽しければそれでいい〟という気持ちで押し殺して見ないフリをしてたんだ。
だからね。
「あ、お久しぶりです!!」
変わらない笑顔で手を振ってくれる彼女を見た時に、胸が熱くて締め付けられた。
いつも通りの表情を作っていたけれど、溢れる感情に戸惑いながら笑って手を振った。
「久しぶりだね!」
長い時間会えなかったからこそ、嬉しくてたまらない。
もっと、もっと一緒にいたい。
俺は恋をしていると改めて実感した。
これが愛に変わる時って、どういう感じなんだろう。
おわり
四〇五、小さな愛
「あっつ……」
俺は空を見上げると真っ青な空が広がっていた。
雨の季節に入ってから曇り空ばっかり見ていたので、こんな青空は久しぶりだ。
でもその分暑い。
救急隊の俺としては熱中症の患者も増えてしまうから、忙しくなっちゃうだろうけれど、天気はなんとも晴れやかだ。
嵐の前の静けさだったら嫌だなあ。
そんなことを考えながら、プシュッと炭酸飲料のキャップを開けて迷わずに口に含んでゴクゴクと飲む。
喉に冷たい炭酸が流れていき、シュワシュワとした感覚が喉に気持ちいい。
でも、たくさんは飲みきれない。
ポコン。
スマホから通知音が鳴る。俺はスマホを覗くと恋人からのメッセージが入っていた。
『暑いから熱中症に気をつけてくださいね』
相変わらず俺を気遣う言葉と共に彼女から写真が送られていた。
それは彼女の会社から見た青空の写真。
雲ひとつない晴れやかな青。
こんなにも広くて自由な空がそこにあった。
俺も思わず自分の目線で空の写真を撮り、彼女に送り返す。
「離れていても同じ空だね、っと」
広くて、自由で、キミと繋がっている空。
おわり
四〇四、空はこんなにも