とある恋人たちの日常。

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2/11/2025, 12:22:11 PM

 
 彼へ生まれた気持ちは確かにホンモノで。
 でも私の気持ちを押し付けるのも、私が彼に片思いしているのも、彼に迷惑をかけてしまいそうで……。
 
 誰にでも優しい人だし、人を助けることが仕事だから、色々な異性から好意を向けられていることも……なんとなく知ってる。
 
 その中で、一番関係性が低いのは私だ。
 
 彼が前を向いて仕事をしている、そのお手伝いができればいい。
 
 私の気持ちで彼を迷わせてしまうのは……嫌だった。
 
 だから、私は自分の心に蓋をする。大好きな想いに鍵をかけて、忘れよう……。
 
 そう思ったのに。
 
 屈託のない笑顔で私に手を差し伸べてくれる彼に、気持ちを抑えられなくなりそう。
 
 ダメ。
 
 ダメだと思うほど、迷惑をかけてしまいそうな気持ちが溢れてしまう。
 
 ようやく落ち着いたのに、彼が当たり前に手を差し伸べてくれるから、また心を抑えるのが大変になる。
 
 自分のココロなのに、全然思い通りにならないよ。
 
 可愛くて、格好よくて、優しくて。
 全部大好き。
 
 
 
おわり
 
 
 
二七一、ココロ

2/10/2025, 12:57:58 PM

 
「「さむーーい!!!」」
 
 冬空どころか、吹きっ曝しの潮風は頬どころか全身に冷たく、ひと吹きの風でふたりは大きな声で叫んでしまった。
 
「こらこんなに寒いとは……」
「真冬の海を舐めてましたね……」
 
 咄嗟に彼女の身体を抱き寄せて体温で暖を取る。いや、むしろそれしかないのだ。
 
 彼女も同じ気持ちで俺に抱きついてくれる。
 
 心許ない温もりかもしれないけれど、違う意味で心身ともに暖かくなりそうだ。
 
 そんな邪なことが脳裏に過っているのに、彼女は空を見上げていた。
 
「あ、流れ星!!」
 
 彼女の声が響き渡る。その声につられて俺は天を仰いだ。
 
 気が付かなかったけれど、そこには満天の星が眩く輝いていた。自分たちの住んでいるところは、どちらかと言えば都会の方だから、こんなに星々が綺麗に見えて胸が震える。
 
 そうすると、スイッと星が瞬く間に落ちていった。
 
「ほら、また!!」
「本当だね」
「今日、なにかあったかな……?」
 
 なにかの流星群の日だったっけ?
 そんなことをぼんやり考えていると、彼女が俺を強く引っ張った。
 
「関係ないですよー! ふたりでいる時に見れたのが凄いじゃないですか!」
 
 寒さで頬と鼻が真っ赤になりながらも、俺に向けてくれる屈託のない笑顔に、自然とこっちも微笑んでしまう。
 
 だって俺の彼女、可愛いんだもん。
 
「また見えるかな?」
「見るまで頑張る!」
「風邪ひく前に戻るからね」
「えー!」
「えーじゃない」
 
 抗議の声が上がるけれど、そこは俺、お医者さんとしても譲れないからね。
 今はふたりだけのおしくらまんじゅうで、どうにか誤魔化しているけれど、感覚なくなったらシャレにならない。
 
「また流れ星が見えたらどうするの?」
「お願いごとします!」
 
 躊躇いなくそういう彼女にビックリしつつも、彼女らしさに可笑しくて笑ってしまった。
 
「なんのお願いごとするの?」
「そんなの決まっているじゃないですか!!」
 
 無邪気な笑顔が俺を捕える。
 
「あなたとずっといられますように!!」
 
 ああ。
 君にはかなわない。
 
 俺は彼女の身体をより強く抱きしめていた。
 
 
 
おわり
 
 
 
二七〇、星に願って

2/9/2025, 1:36:57 PM

 
「わっ」
 
 何か軽くパコンという音と共に、バランスを崩して後ろに倒れ込む。けれど、道に倒れるわけはなく、隣で歩いていた恋人が私をうまいことキャッチしてくれた。
 
 さすが、救急隊員さん。
 とっさの救助行動はお手のものです。
 
「大丈夫?」
「はい、ありがとうございます!」
 
 彼が背中を支えてくれるから、立ち上がろうとすると転んだ方の足がカクンッと力が抜けて、また彼の胸に寄りかかってしまった。
 
「あ、あれ?」
 
 足に痛みは無いから、くじいた感じはなかったので足元を見るとヒールの踵が外れてしまっていた。
 
「わ、うそ!?」
 
 これからデートなのに!?
 今到着したばかりなのに!?
 
 戻る……という選択肢も無くはないけれど……ここまで来るまでの往復の時間を思うと、それはためらってしまう。
 
 お気に入りの靴だったし、割と履いていたから寿命なのかもしれないけれど、少しショックだった。
 
「どうしよう……」
 
 すると、背中を支えてくれていた彼が、私をしゃんと立たせてくれる。その後、私の正面に回ったかと思うと、しゃがみ込んで両手を後ろに向けてくれた。
 
「背中、乗って」
「え!?」
 
 それは……おんぶしてくれるってこと?
 
「でも……」
「軽いから、大丈夫。ほら乗って!」
 
 さすがに体重を全部預けるのに抵抗を覚えていたら、見破られてしまっていた。
 私はおずおずとしながら、彼の背中に体重をかける。すると、簡単に背負ってくれた。
 
 普段、色々な人を助けているから、私くらいは本当に軽いのかも……。
 
「ちゃんと掴まってね」
「うん、ありがとうございます」
「君が悪いわけじゃないから、気にしちゃダメ」
 
 少し迷いはあったけれど、お言葉に甘えて彼に後ろから抱きついた。暖かい彼の背中に、覚えはないけれど懐かしさを感じてしまった。
 
 こんな風に背中にぎゅっとしたことは、あまりないなー。なんてぼんやり考えてしまった。
 
「とりあえず、靴屋さん探そ」
「うん」
 
 周りの視線は少し痛い。
 でも、見た目より広い彼の背中に寄り添っていると、安心してしまい眠りに落ちそうになった。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六九、君の背中

2/8/2025, 12:58:38 PM

 
 ドコから来たのか。
 それは大好きな彼にも言えない。
 
 ココに来てからの私が、今の私のすべて。
 
 居場所がなくなった私が求めたのは、〇〇で。
 でもそれを彼には言えなくて。
 だって、きっと言っても信じてもらえない。
 困った顔で笑ってくれる。と、思う。
 
「遠く……に、来たよね。私」
 
 過去に戻りたいかと言われたら、それは絶対にない。
 
 今がいい。
 彼と想いが通じ合った今がいい。この〝今〟のこれからがいい。
 
 私は窓の外を見つめる。お日様が下へもぐろうとしている鮮やかな夕陽が見えた。
 
 もっと先に……あるのかもしれない〇〇。
 
 そこから逃げた私は、現在(今)、彼に出会って、これ以上にないほどの幸せを噛み締めている。
 
 今がいいの。
 
 夕陽は彼の優しい瞳を思い出してしまうからか、私の目から涙がこぼれ落ちた。
 
 今がいいの。
 この今で〇〇に帰りたいの。
 
 大好きな彼と一緒に。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六八、遠く……

2/7/2025, 12:31:09 PM

 
 俺には好きな人がいます。
 
 誰にでも笑顔だし、優しいし、思いやりのある女性だから、他の人からも好意を向けられている……気はする。
 
 請求書に添えてくれる他愛のない一言が嬉しくて、好きなものが同じものが多くて、無理に内側に入ろうとしてこなくて……。
 
 一緒に居て心地いいんだ。
 
 募っていく〝好き〟という気持ちをいつか伝えられたら良いと願ってしまう。
 
 誰も知らないけれど、誰にも言っていないけれど。
 多分、周りの人たちは少しづつ気がついている俺の秘密。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六七、誰も知らない秘密

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