少し前と言うか、去年のクリスマスに恋人へのプレゼントのこと。
プレゼントを贈る時って割と色々考えるじゃない?
特に相手が恋人だから尚更。
正直さ、俺が何を贈っても喜んでくれると思うんだ。
でもさー、そうじゃないよね。
やっぱり心に響くものを渡したいって思ったんだ。
散々悩んだけれど、やっぱりそれを贈りたくて、一度お世話になったジュエリーショップに相談に行った。
今、それは彼女の薬指で光っている。
プラチナに、彼女の色だと感じている宝石であるアイスブルーダイヤモンドのリング。
それは、俺にとっての未来への鍵。
おわり
二三九、未来への鍵
遅い冬休みで恋人と日の出を見に来た。
早い時間に眠り、日の出に備えただけあって暗い時間に目を覚ます。
日の出を迎えるには、まだまだ早い時間。
俺が飲みものの用意をしていると、彼女がカーテンを開けた。
「わぁ……」
彼女が感嘆の声をつく。
「見てください!! 月と星のかけらがキラキラしてます」
「どゆこと!?」
彼女の言葉に驚きながら、暖かい飲み物を彼女に渡しつつ隣に立った。
視線を彼女から窓の外に向けると、月と星が水面に反射してキラキラしている。
「すごっ……」
日の出を見るために選んだホテルはオーシャンビューだから、日が入る前の暗い海に輝きを放つ。
確かにこれは月と星のかけらが輝いているように見えた。
彼女が自然と俺に身体を寄せてくれる。
「ここから日の出が楽しみですね!」
彼女の腰から抱き寄せると視線が絡み合う。自然と笑顔になってから、もう一度海へ視線を戻した。
「そうだね」
おわり
二三八、星のかけら
透明感のある異質な世界。ここは神様の住まう場所。
そんな中、異質でレトロちっくな部屋に一際珍しい音がジリリリリンと鳴り響く。
それはスマートフォンが世界に浸透した世界なのに、家主は時代遅れも甚だしい電話の音だった。
細身の手が古めかしい黒電話に手を伸ばす。
「もしもし」
どこか艶やかな声が響き渡る。
受話器越しに聞こえてきたのは、少し前から気にしている男女の様子を知らせてくれる連絡だった。
お互いへのリスペクト、思いやりを持っているふたりが、心が通じ合い恋人になって時間が経つ。
年末年始に青年が忙しそうにしていたけれど、落ち着いて過ごしているらしい。確認する限り、小指の糸の色が鮮やかな赤になっているとのこと。
神様は満足そうに微笑み、「ありがとう」と告げるとガチャンと重そうな音を立てて受話器を置いた。
あのふたりは、神様の清涼剤。
ケンカをする訳じゃない。
お互いを想うから怒り、相手は反省して身を寄せ合う。
それを聞いて心が落ち着いた。
色々なものを見守る神様にだって楽しみは欲しいんですよ。
おわり
二三七、Ring Ring……
年末年始、しっかりと働いた身として、ようやく手に入れた長期休み。
恋人と日の出を見に行きたくて、旅行に行くことになった。
俺はスマホで近場で日の出が見られるホテルを探している。言い出しっぺだからと行く場所を選んで欲しいと言われたからだ。
ちらりと彼女に視線を送ると、彼女もスマホを見ながら何か調べていた。
「わっ!」
突然、大きな声とともにソファから立ち上がる。
「え!? なに、びっくりした」
「ああ、ごめんなさい。ほら見てください!」
そう満面の笑みで俺にスマホを向けてきた。そこには一週間天気予報があって、ずらりと晴れマークが並んでいた。
「凄くないですか!? 晴れマークがいっぱいですよ!!」
俺たちの目的は〝日の出を見に行くこと〟だ。そこには天気が晴れていることが条件になる。
「まだ、場所決めてないよ?」
「なに言ってるんですか! 全国的に晴れですよ!! 大丈夫です、どこだって問題ありません!」
彼女の声が大きくなり、いつも以上にハツラツとしている。これは本当に楽しみなんだな。
「神様が日の出を見に行く私たちの背中を押してくれているみたいじゃないですか!!」
そう言われると、俺も嬉しくなる。なによりそんな考えを持つ彼女がより愛おしくなる。
確かに天気が左右する旅行だから、天気がずっといいのは追い風みたいなものだ。
テンションの上がっていく彼女を見て、俺の心も弾んでいく。
「分かった! 直近で行けるところ探そうー!」
「おー!!」
ふたりで片手を挙げ、気合を入れて行く場所を探した。
いくつかピックアップした中から、彼女がここに行きたいと言うホテルは、オーシャンビューの上に朝食が目玉で温泉もある。
もっと調べるとお正月明けという事で、かなりお手頃の値段になっていた。
「すんごい追い風……」
「これならワンランク上の部屋でも行けませんか?」
「行ける行ける」
彼女が俺の腕に手を絡めて寄り添う。
「年末年始、沢山お仕事されたんですから、ちょっと贅沢していっぱい休みましょ」
さっきまでの爆上がりテンションとは違う、慈しみを感じる視線で俺を見つめてくれる。
そっか。
楽しみは楽しみだけれど、〝俺が休める〟ことを最優先にホテルを選んでくれたんだな。
自然と口角が上がってしまう。それと同時に彼女への愛しさが溢れてくる。
「ここに決めよう。俺、連絡するね」
「はい! じゃあ、私は支度始めちゃいますね」
お互い、ひとつ頷いてからそれぞれの作業に移る。
神様から背中を押してもらったんだ。
良い旅行にしよう。
そんなことを考えながら、俺は通話ボタンをを押した。
おわり
二三六、追い風
ようやく……ようやくお休みをいただけました!!
救急隊という、休みの日ほど忙しくなる仕事。年末年始もあって、お正月なんぼのもんじゃいというレベルで普通と変わらない……いえ、大変忙しゅうございました。
そんなこんなで、ようやく休みです。
冬休みです。
正月休みです。
恋人は一般的な休みではあったのだけれど、車の修理をしているため、緊急で連絡があった場合は率先して出勤していたと聞いた。
その甲斐もあって彼女も同じ日付しっかり休みが取れた。
今日から少しはゆっくりできるのが嬉しくて仕方がない。
けれど……ちょっと提案したいことがあった。
最後の夜勤の日に見た日の出が綺麗で、あの景色を彼女と一緒に見たいと思ったんだ。
「ねえ、旅行しない? 近場でもいいんだけど」
「ふぇ? どこか行きたい場所があるんですか?」
大きな瞳がさらに大きくなる。驚く彼女に言葉を返した。
「行きたい場所って言うか……見たいところがある、みたいな?」
「???」
見るからにクエスチョンマークが数個頭に飛んでいるのが分かる。
そうだよな。
〝どこ〟と言うのは言えないんだよね。
「うーんとね、日の出を一緒に見たいんだ。初日の出じゃないけれど、日の出ならいつだって見られるじゃない?」
それを告げた瞬間。本当にパッと花が咲いたように笑顔になった。
「なにそれ素敵です! 行きたい、行きたい!!」
とんでもなく前のめりで挙手をする。
「どこか分からないから、宿が取れるか分からないよ?」
「大丈夫ですよ! お正月休みが終わって、きっと空いていると思います」
なるほど、それはそうか。
彼女はスマホを取り出してスイスイと探し出す。
「ほら、見てください!」
スマホの画面には近場で日の出が見られるホテルの一覧があった。しかも結構割引されてる。
「今回長めに休みがありますから、天気調べて連絡してみましょ!」
満面の笑みで、休みの計画を立て始める彼女に嬉しくなった。
ゆっくりするつもりだったけれど、突然の俺の言葉に賛同してくれて安心する。
「どこに行きましょうか! あ、言い出しっぺだから、決めてくださいね!」
「ボール俺?」
「はい!」
まあ、君と一緒なら、どこでもいいんだけどね。
そんなことを思いながら、肩を寄せあって思いつきの旅行計画を立てることにした。
おわり
二三五、君と一緒に