空はこんなにも遠い。
僕の声が届かないくらい遠い。
何時になれば君にまた会えるだろう。何時になれば僕の願いは叶うだろう。
君にもう一度、一目だけでもいいから――。
空はこんなにも遠い。
子供の頃、未だ世の中を知らない時分。夢は無限大だった。多種多様の夢の中から、僕は1つの夢を抱いた。
努力すれば絶対になれる。そう思って、疑わなかった。だけど、成長していくにつれて、悲しいかな現実の壁を見る。絶望し、挫折を繰り返す。夢が、あんなに輝いて見えていた夢が、恐ろしく思えてくる。投げ出し、逃げ出した。
けれど、やっぱり諦めきれず前、前、前へと進もうとする自分がいる。
食べ掛けのまま置いた夢を、子供の頃の夢を、諦められなかった。
だから、こうして僕は今此処にいる、立っていられる。あの頃は苦しかった、挫折も嫌というくらい味わった。人生、現実を知った。知ってきたからこそ、楽しいとも感じられている。
夢は絶望を与えるけれど、それと同様に叶った時の言いようない喜びと希望を与えてくれている。
――じゃあ、また何時か。
帰ろうとする貴方の手を私は掴んだ。貴方は振り向き、目が合う。
「どこにも行かないで」が、云えない。云えないまま、貴方を見つめている。
ため息1つ吐いて、貴方は私の頭を優しく撫でながら微笑んだ。
君の背はとても遠く。
声さえ届かないくらい、遠い。
だから追いかけるのを諦めた。だって、どんなに追いかけても追いかけても届かないから。
それなのに、私はどうしても君の背を目で追っている。
悔しい、君のことがこんなにも憎らしいのに。
――どうしょうもないくらい君の背を追いかけている。
今は好きなものが、時間が経つと次第に嫌いになったり、苦手になったりする。
その逆も然り、人の成長〈時間〉は何時だって有限、終わりの時まであと何回、好き嫌いを繰り返せるだろう。