—受け継ぐ想い—
私の心優しい友人の話をしよう。
「父さんに友達がいたの?」と息子は首を傾げて言った。
ああ、私の数少ない友人だ。その友人は珍しい事に、いつも星図を持ち歩いていた。
「どうして?」此処でもまた、首を傾げる。
彼は自分でそれを作ろうとしたからだ。星が好きでね、その魅力を色々な人に伝えたかったらしい。
「すごい人なんだね」
もちろんすごいさ。そして彼は、見事に自作の星図を完成させたんだ。
「えー!見たい!」
ごめんユミコ。私の部屋からあの星図を持ってきてくれないか。
「ええ、いいわよ——はい、どうぞ」一分程の間の後、妻が渡した。
「うわーすごい!」
すごいだろう。これがあれば星の位置や名前、星座まで全て知れるさ。
「ねぇ、どうしてブツブツがついてるの?」
それは、点字って言うんだ。私のように目が見えない人でも星を学べるように、それがついているんだ。
「その人はお父さんの為に作ってくれたんだね」
ああ。その友人のおかげで、私は星を知れた。それをお前にあげよう。
「いいの?」そう言って、頬に光が差したように笑った。
もちろん。きっとお前も星が好きになる。大切に使ってくれよ。
「やったー!ちょっと星を見てくる!」
気をつけて行っておいで。
友人よ。星図は息子に託した。本当に感謝している。お前が旅から帰ってきたら、是非お礼を言わせてほしい。
どうか、星の下でまた会えますように。
お題:消えた星図
—愛の方程式—
最近、妻と会話をする事が減った。結婚してから三十年も経つのだから、仕方ないとは思う。
付き合っていた頃は、いつも何かを話していた。会えない時には、電話越しに夜更けまで会話したものだ。
もちろん、以前のような胸の高鳴りはない。
「なぁ、今度映画館にでも行かないか?」
私は妻をデートに誘ってみた。
「いいですよ。一緒に出掛けるなんて久しぶりですね」
妻はそう言って笑みを浮かべた。
恋という感情はとっくの昔に消え去ってしまった。それでも一緒に居たいと思うのは、愛がある故である。
だからもし『愛 — 恋』という方程式があるならば、その解は愛であると思うのだ。
お題:愛 — 恋 = ?
—幸せはもうここに—
子供の頃は病気がちで、よく入院していた。父はお見舞いに来てくれる時に、よく梨を持ってきてくれた。
大人になってから知ったことだが、病気見舞いで梨を持っていくことはあまり良くないらしい。でも私は梨が好きだから、むしろ嬉しかった。
「お父さん、早く良くなると良いね」
私が大人になって、今度は父がよく入院するようになった。
「いつもありがとうなぁ。俺も梨が好きなんだべ」
そう言いながらむしゃむしゃと食べる。
食が細くなったせいで、父の体はだんだんと弱々しくなっていく。
「何か欲しい物があったら言ってよ」
「それなら、アイの幸せな話が聞きてぇな」
まだ冗談を言う余裕はあるらしい。私は父が食べ終わった皿を回収した。
「じゃあまた来週来るから、ちゃんとご飯食べて元気にしててね」
「何で無視するんだべ。まぁいいや、いつもありがとうなぁ」
「うん、またね」
そう言って、病室を後にした。
今度は、私が父に恩返しをする番だ。父が好きな梨をまた買っておこうと思う。
お題:梨
—最高のライバル—
親友が、大学進学の為に上京するという。その大学はサッカー部が強い。何人ものプロ選手を輩出している、有名な大学である。
駅の改札口で彼の後ろ姿を見つめていた。
「他の奴らに負けるんじゃねぇぞ」
俺は、小学校の頃から彼と一緒にサッカーをプレーしてきた。だから、周りの誰にも負けてほしくなかった。
「当たり前だ。今度は敵同士で——」
俺は地元の大学に進学し、サッカーを続けるつもりだ。
「また会おうな」
「あぁ。試合であたったらボコボコにするからな」
俺がそう言うと、彼は笑った。
最後に手を振って、彼が見えなくなるまで見送った。
「絶対負けない」
次会う時には、絶対に彼よりも上手くなって見せる。彼と再会できるのを楽しみにしながらも、心は闘志で熱く燃えていた。
お題:LaLaLa Goodbye
すみません、後日書きます。
お題:どこまでも