初心者太郎

Open App

—受け継ぐ想い—

私の心優しい友人の話をしよう。

「父さんに友達がいたの?」と息子は首を傾げて言った。

ああ、私の数少ない友人だ。その友人は珍しい事に、いつも星図を持ち歩いていた。

「どうして?」此処でもまた、首を傾げる。

彼は自分でそれを作ろうとしたからだ。星が好きでね、その魅力を色々な人に伝えたかったらしい。

「すごい人なんだね」

もちろんすごいさ。そして彼は、見事に自作の星図を完成させたんだ。

「えー!見たい!」

ごめんユミコ。私の部屋からあの星図を持ってきてくれないか。

「ええ、いいわよ——はい、どうぞ」一分程の間の後、妻が渡した。
「うわーすごい!」

すごいだろう。これがあれば星の位置や名前、星座まで全て知れるさ。

「ねぇ、どうしてブツブツがついてるの?」

それは、点字って言うんだ。私のように目が見えない人でも星を学べるように、それがついているんだ。

「その人はお父さんの為に作ってくれたんだね」

ああ。その友人のおかげで、私は星を知れた。それをお前にあげよう。

「いいの?」そう言って、頬に光が差したように笑った。

もちろん。きっとお前も星が好きになる。大切に使ってくれよ。

「やったー!ちょっと星を見てくる!」

気をつけて行っておいで。

友人よ。星図は息子に託した。本当に感謝している。お前が旅から帰ってきたら、是非お礼を言わせてほしい。
どうか、星の下でまた会えますように。

お題:消えた星図

10/17/2025, 8:54:04 AM