たそがれどきのいま
あなたの影は長く美しく
あなたの足元を彩る
いつかあなたの影などではなく
日に照らされた横顔を見られる
そんな時が来るのでしょうか
もし羽が生えていたなら
鳥のように空を飛びたい
この世界を皆より高いところから眺めていたい
でもそうなったら
こんなふうにビルから飛び降りることは出来ない
あぁ早く、
傍観者になろう
こんな世界でも上から見ればきっと綺麗だと
信じているよ
君が上を向いていたので釣られて空を見ると
そこは血塗られたように真っ赤に染っていた
「なんか、この世の終わりみたいだね、こわ〜い」
なんでもないように君が呟く
この世の終わりならいいだろう
君がいなくなる方が自分にとっては何倍も怖い
君がいなくなった時、
この空は一体何色になるのだろうか
空模様はどうなるのだろうか
そう思いながら視線を君に落とす
「何深刻そうな顔してんの、帰ろっ!」
そう無邪気に笑う君を見て、ふと確信した
太陽のような君が行くのなら
君が死んでしまう日の空はきっとどんな日よりも
いっそう青く、美しく輝くのだろうな
それを僕は空の上から眺めていたい
駐車場に車を止めて
2人で海に向かって歩を進める
「夜の海って怖いね」
「なんか動き始めそう、ぐわぁって」
「え、めっちゃわかる」
「攫われないでね、絶対」
「任せて」
久しぶりの海にテンションが上がったのか
どんどんと君は先に進んでいく
ほんの少し立ち止まっただけなのにもう海の中にいる君と砂浜に立つ自分
「待ってってば!」
急いで追いかけて背中に飛びつく
「うわっ」
2人分の重みを受け、水が飛沫をあげる
「着替え持ってきてないのに何すんだよっ、びびったぁ」
「びしょ濡れだ」
2人で同時に髪をかきあげた
ふはっ、同時に笑って仰向けに海へ浮かぶ
「服どうしようね」
「夜だし…なんとかなる?」
「適当かよ」
波に攫われないよう、しっかり手を繋ぐ
人魚姫は最後泡になって消えてしまったけど、
自分たちなら大丈夫
何があっても消えることはない
だって結ばれる運命なのだから
キッチンで鼻歌を歌いながら
手をせっせと動かす君を遠くから眺める
ご機嫌なようで、君の奏でる音楽はいつもより
アップテンポ
君のせいで名前も知らないのに鼻歌を歌える曲が
どんどん増えていく
何の曲か聞いて、君の鼻歌セットリストでも
作ってみようか
「ねぇ、それなんの曲?」
「ん?自分で作った」
無邪気な君の答えについ笑いがこぼれる
なんて素敵なんだろうか、
今までの曲もこれからの曲も歌えるのは君と僕だけ
いつか2人で歌って、録音して、
思い出としてCDという形に残してみよう
きっと何よりも素敵な宝物になる
平穏な毎日の記録として