今では夏のラブソングの定番となった曲を
流しながら夜、海沿いの道を車で走る
「麦わら帽子とか被ったことない」
「あぁ俺も。今どきまず売ってないよな」
短い会話が終わり、静かに2人曲に耳を傾ける
「アイラブユー」
「何、キスしてほしいの」
「言いたくなっただけだし。
別に、離さないでいてくれたら良い」
「そう?」
強がりのように視線を窓に向けたままポツリと言い放つ君
膝の上で固く握られた手に自分の手を重ねる
驚いて振り向く君にそっと唇を重ねる
「ばかっ、危ないからちゃんと運転してよ!」
「残念、赤信号でーす」
真っ赤になった頬をそっと撫でる
「離すつもりなんてないから覚悟しとけ」
名曲をBGMに2人もう一度口付けを交わした
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あいみょんさんのマリーゴールド
素敵な曲ですよね
初めて乗った路線の終点
星の明かりと駅の街頭以外、
自分たちを照らすものが何も無いような、そんな場所
電車を降りた人もきっと自分たちだけなのだろう
「どうしようかね」
「一応、ぶらぶら歩こ」
決して結ばれない運命と分かっていても
この温もりを離すまいと繋いだ手に力を入れる
駆け落ちなんてロマンチックな言葉、
自分たちには似合わない
これはただの
逃避行
もう戻ることは無いあの終点の駅に背を向け、
2人明るい暗闇に向けて歩き出した
Dear 現在の君
上手くいかなくたっていい
そうみんなは声をかけてくれるけど、
上手くいくに超したことはないんだろう
そんな廃れた心の僕に君はこう言ってくれましたよね
確かに上手くいくに超したことはない
次の日に君が笑えてたなら失敗も成功も
''いつかは忘れる大切な財産''なんだから
どこかの誰かからしたら君の成功も失敗も
大体1週間後には忘れてるくらいの物
後悔だけはしないように
そう言われて伝えた君への思い
上手くいかなかった君への恋、
こうして思い出として書き記せるようになりました
君に出会えてよかった
from 回顧の僕
P.S.この手紙を読むあなたが今、笑えていますように
「明日、花火大会なんだって」
無機質なテレビの音だけが流れていた部屋の中で君の声がぽつりと響いた
「行きたいの?」
「無理なのは分かってるからいいよ」
君がテレビに向かって視線を移し、諦めたように笑ってこちらを向いた
「今が1番幸せだから」
テレビには君の顔写真と君の個人情報をプライバシーがどうとか関係なく淡々と述べるキャスター
「…明日、晴れたらベランダから見てみよっか」
「見えるの!?」
「見えるよ、天気が良ければ」
「うわ、めっちゃ楽しみ」
きっと長くは続かないであろう僕と君のこんな日常
何年か経ったあと
君の思い出の中に残っているのが少しでも笑顔に溢れた日々であって欲しい
そう思いながら夜空に咲く花に思いを馳せた
いつだって君はここにいるのに
僕はただ君と話してるだけなのに
みんなは変な嘘をついてくるんだ
君はもういない
なんて嘘
だって君は今もはっきり僕の隣にいて
笑顔でこちらを見つめているのに
でも君までも変な目で見られるのは嫌なんだ
君とゆっくり話したい
2人だけの時間を…
だから一人でいたい