「ごめん。好きな人がいるんだ。」
相手はあの人だろう。
シャイで口下手だからと想いを伝えられない弱いあの人。
あなたに向ける視線は誰が見ても大切な人に向けるそれなのに、なにをうじうじ今のままで甘んじているんだろう。
…両想いなのに。
でもあの人には絶対教えてやらない。
両片想いをしている人たち、
そんな人に片想いしてる俺って不憫だなとつくづく思う。
寝て起きたら綺麗さっぱりあなたのことを忘れていられたらいいのに。
あなたにもう一度会ってしまったら結局好きになるんだろうけど。
明日もまた会いましょう。
あなたをどうしたって好きな俺に。
231113 また会いましょう
「好きだよ。」
「…そういうことは本当に好きな人に言ってあげな?」
あなたは困ったように笑いながら、
そう言って俺の告白を受け流す。
からかっているのだと思っているのだろう。
スリルを味わいたい、
なんて悪趣味なことはしない性格なのに。
俺は狡いからそんなあなたの言葉を利用して
「本番に向けての練習だし。」
と、うやむやにして流れを断ち切った。
あなたにはあの人がいることは百も承知。
俺があの人に敵わないことなんか百も承知。
…でも、伝えることくらい許してよ。
一世一代の本番だったのに。
231112 スリル
綺麗な顔しておもしろいあいつは人気者。
はたまた人情深くて歌が上手いこいつも人気者。
そんな人気者と友だちな俺には、なにもない。
でもこれからもふたりと肩を並べて笑っていたい。
だから"なにもない"をどうにかしたい。
そんな思いでがむしゃらにここまで生きてきた。
飛べない翼を携えて、今日も俺はがむしゃらに歩く。
__________
なにを言っているんだ、と人気者たちは憤怒する。
あなたは昔からずっと、
がむしゃらに健気でがむしゃらに頑張り屋じゃないか。
俺らが笑顔でいられるのはあなたが笑顔でいてくれるからだ。
はやく気づけ。
飛べないと勘違いしているだけの翼であることに。
はやく気づけ。
俺らを包んでくれるあたたかい翼であることに。
231111 飛べない翼
「…え、ほんま?」
「なんで疑問系やねん。」
ススキがなびく季節になった。
いつも通り幼馴染と帰路を歩いていると、
幼馴染が唐突に歩を止め真面目な顔して好きだと伝えてきた。
なにがこいつの中の告白スイッチを押したんだ?
そんな疑問はあれど、
自分も同じ気持ちだったから同意を返したらこれだ。
阿呆面晒してぽかんとしていた表情から一気に頬に朱が入る。
…夕焼けってことにしておいてあげよう。
きっと同じく朱が入っているであろう自分への言い訳も兼ねて心の中で呟いた。
ススキの花言葉「心が通じる」
231110 ススキ
脳裏に浮かぶあなたの泣き顔は、
さみしさ、かなしさに満ちたものだった。
今、目の前にいるあなたも泣いている。
「これから先、どんな感情もすべて一緒に感じたい。
俺とともに生きてくれませんか?」
ぐちゃぐちゃなのにうれしさに満ちた泣き顔で。
231109 脳裏