鐘の音が聞こえる。
朝日が影と光の境界線を創り出す。
まっしろな廊下を歩いて教室へ。
ーーへ
後で資料室来て〜!
お願い!!
僕1人であの量の資料分けらんないよ~
待ってるからね!!?
ーーーより
資料室、、、
しゃあない、いくかぁ。
まだ眠気の取れない体をのろのろと動かす。
早朝の生徒が来ていない廊下は静かで心地いい。
廊下まで溢れた紙と電子メモリ。
その部屋から漏れ出る光と廊下の光が混ざりあう。
「おぉ~、きたきた」
きたきたじゃないわ資料の虫が。
なんて、思いつつふり返る。
混ざりあう光の中でやわらかく笑う資料の虫こと君がいた。
はぁ~、、、もう、、
静かでまっしろな廊下と
混ざり合う光と
笑う資料の虫が綺麗だから。
だからそれに免じて、、、
『はいはい、俺が手伝ってあげますよ』
資料と電子メモリをひろいあげる。
つまらないことでも
それをした時間はけして無駄な時間ではない。
もし違うなら
僕は地に足がついたときからずっと時間を無駄にしている。
現に今もつまらない理由で
つまらないことのために
人に世話をかけて
つまらない人生を送っているつまらない奴だと
そう思われているだろう。
でもそれは僕以外の視点だ。
僕が見ている僕は
この世界でつまらないを誰よりも我武者羅に追いかけている。
そしてとても楽しそうで奇麗で美しい。
と、思いたい僕だ
目が覚めるまでに僕は何をするべきだろう。
この透明で透きとおった果のない空間の中、
出来ることはなんだろう。
僕は何をしたいんだろう。
僕が思うことは。
本音は。
目なんて冷めなければいい、そう思ってる。
この世界は。
僕が生きているこの世界は。
97%はとても深くて血みどろで意味がわからなくて難しい。
3%はこの空間と同じ。
何にでもなれるし、いつでも97%へ追い出そうとする。
97%に生きている僕は。
3%に恋い焦がれて依存している僕は。
いつ死んでもいいし、時が来るまで生かされる。
どうせ人生の97%は自分の選択で。
3%は神様が予め僕に与えた人生のデータだ。
くらくらするこの世界で3%に行くためだけに、
朝がもう一度来て瞼が上がってしまったら。
なりたかったわけじゃないけど3%に行くために僕がした、
97%の選択のうちの1つを完結させるため労働者になる。
まだ高校生にさえなりきっていない僕の。
いつまでも少年でいたい僕の。
僕だけの少しの後悔と屈辱と。
僕だけのたくさんの好奇心と少年心を。
楽しそうに笑って話す高校生を横目に噛み砕く。
病室からもうずっと出ていない。
最後に出たのはいつだったっけ。
でも寂しくはないよ。
毎日君が来てくれるから。
僕は覚えてる限りこの病院の敷地から出たことがない。
そういう子はこの病院にたくさんいるけど、
仲良くはなれなかった。
みんな僕より体が強くて僕よりいろんなことができた。
僕にはできないことがたくさんあったから誰も仲間に入れてくれなかった。
昔から僕を看てくれている看護師さんがいた。
その人はずっと僕の担当だった。
最近はなんだか悲しそう。
僕は病院の子と仲良くなれなかったけど、
君は僕を見つけてからずっと仲良くしてくれてる。
初めて次の日が来るのが楽しみになって
初めてずっと起きていたいと思った。
そのくらい君が大好きだよ。
早く来ないかなぁ~
「おはよ、来たよ」
そうやって笑う君が早く見たくて、
たくさんの管に繋がれた体が今日もそわそわして落ち着かない。
だから、一人でいたい。
って言ってたの。
彼はそうやって僕から離れていったの。
僕は一人でいたいけど、
1人でいたくないの。
だからお願い。
僕の純美が壊れるまででいいから、
手を離さないで。