束の間の休息
バイトAは5時間。次のバイトBまでは8時間。この間に風呂に入って飯を食って睡眠時間を確保して朝の5時に出勤する。バイトBは4時間で、バイトAまでは6時間。この間はちょっとした軽食を食べて気持ちばかりの自由時間と2時間程度の昼寝を経て、昼の15時に出勤する。足りない1時間は移動時間。それを繰り返す毎日で、どちらかが休みの日は飼っている爬虫類の世話をしたり、友人と飲みに出たり。最近は君の家にお邪魔してひたすらだらだらしたり。
仕事仕事の毎日を選んだのは自分だから後悔はしていない。休日はあるし、一緒に過ごしてくれる人達もいる。それでも、どうしようもなく疲弊した時は。束の間の休息を君の隣で。
力を込めて
タイミングというのは大事で、何でも全力で力を込めてすればいいというものでもない。というのを今回の君との進展で如実に感じました。肩の力を抜いているからこそ信憑性が高まる事もあるし、ただ一点だけに力を込めて真剣味を帯びさせるようにもしました。勢いのままに、なんて照れ隠しで、これでも色々考えながら言葉を選んで場面を用意して第三者にも言い聞かせるように。自分が出来る全てを総動員して、これでフラれたら悔いはないと言わんばかりに。これ以上の情熱を他の誰かにはもう注げないと思えるぐらいに。自分にとっての全てが君の為にあるんだと、少しばかり大袈裟に魅せて。
まどろっこしいことを取っ払って、力を込めて伝えるのなら。
死ぬまでよろしくね。
過ぎた日を想う
小学生の頃が人生のピークだった。何の責任もなく、毎日が初めてのことばかりで何をしても楽しかった。集団行動は得意ではなかったけれど、そんなに強く咎められることもない。低学年の頃に学習障害だと診断され算数の時間だけ別室で授業を受けたりもしたが、特段それがコンプレックスになったりすることも周囲からとやかく言われることもなかった。
中学生になって雲行きが怪しくなる。3つの小学校が1つの中学校になる、いわゆるマンモス校でその時点で息苦しかった。学年集会や全校集会で人が大勢集まっていると気分が悪くなることが多かった。それでも個人で見たら友人は少ないわけではなく、運動部に所属して毎日部活に取り組む活発な生徒に分類されていたと思う。ただこの頃から遅刻や忘れ物が目立つようになる。欠席はしないけれど毎日5分10分遅刻する。それは学校に限った話ではなく、休日の部活動や友人と遊びに行く際にも。それと同時に始めることと終わることが苦手になった。始めるまでにえらく時間が掛かるが、いざ始めたら周囲が止めるまで終われない。調子がいい時は何日でも起きていられたが、調子が悪くなると半日を睡眠に費やすことになった。躁鬱病だと言われた。それでもこの頃はそこまで症状が酷くなかったと今だから分かる。人生で初めて人と付き合ったのも中学生で、学年が違ったから卒業と同時に自然消滅した記憶しかないけれど。
高校生は今のところ人生のどん底だったと思っている。一番近い学生時代のことではあるが、「まぁ思い出さなくていいや」と「ちゃんと向き合わないと」という気持ちが真っ向から対立している。言ってしまえば躁鬱病が悪化して抑鬱状態が酷く出た。ストレスの発散方法が自傷になったのもこの頃で、他害が出なかっただけマシだと自分では思っている。非行に走るとかそういったことはなかったけれど、放課後に登校して部活動にだけ参加したことも多々あった。教室に入れずに図書館や相談室で一日が終わることもあった。兆しが見えたのは高校三年の二学期辺り。然るべき場所への通院と然るべき処置、処方の甲斐あってかなり人間に戻った。以前のようには出来なくなってしまった事もあったが、元通りに出来るようになったこともあった。そしてなぜか卒業までの半年間で同時に二人の人と付き合うことになる。突然のクズ要素。どちらも自然消滅だから許され……ないか。
社会人になってからも躁鬱病は猛威を振るったが、今も通うバーに出逢ってからは大分大人しくなっている。精神的に安定したらしい。高卒で就職して、21歳でバーに通い始めるまでの数年はちょっと人様には言えないような、言う相手を選ぶような過ごし方ではあったものの、ちゃんと仕事はしていたし人付き合いもそれなりには。
ここ数年は毎年のように「今が一番楽しい!」を更新していて、今年は君との進展があったから楽しいだけではなく嬉しいも加わった。君の過去も聞く限り中々ではあるものの、お互いどうにか生きているから何も問題ないね。
こうやって過ぎた日を想ったところで、今が君とで良かったと心底思う。
星座
獅子座と水瓶座。
Leo&Aquarius.
君の星座を知ったのだって、君の誕生日の一ヶ月前のことだからね。結婚ならしてもいいと言われて、じゃあ結婚してよと即答したあの日に君の誕生日を知ったんだから。最短2年、最長4年の返事待ちの期間でどれだけ君について知ることが出来るだろう。それぐらい君のことを何も知らないままに、勢いのままにここまで来たんだから。
踊りませんか?
曰く、何も知らない人と結婚は無理。
曰く、だって冗談だって思ってたから。
一度目は、まだ連絡先も交換していない顔見知りの客同士。自分が「トリプルワークを始めます」という少しばかり頭のおかしいことを言い始めた頃。なぜそれを始めようと思ったのかは覚えていないが、気付いたらそうなっていたというのが正しい。カレンダーに空欄などなく、一日の半分は仕事で埋まる。そんな生活がもうすぐ始まるから、お店には顔を出せなくなりますと挨拶も兼ねて飲み歩きをしていた頃。
「来月からトリプルワークが始まるから、絶対しんどくなるの。癒やしが欲しいから付き合ってよ」
「嫌だよ、絶対仕事優先じゃん。会えないし遊びにも行けない人となんで付き合うの」
「だめかー」
そういうことを口に出せるぐらいにはよく会うし、仲は良い方だった。割とちゃんと断られて、案外押したらイケるのでは?と思ったのがこの時の感想。これを言うと「鋼メンタルなの?」と聞かれるが、仕事という分かりやすい理由で断ってきたのなら仕事を調整すればいいと思ったのだ。
二度目は、その数ヶ月後。トリプルワークを始めてもうすぐ一年が経ちそうというそんな頃。身体の限界と言うか、主軸にしていたバイト先に新しく来た上司があまりにも役に立たず心が疲弊してバイトを辞めようかと周囲に相談していた頃。新しく来た上司は社員で、仕事が出来ないけれど社員なばかりに安易にクビにすることが出来ず系列店で押し付け合っているような人で。結論から言えば自分はそこのバイト先を辞めた。主軸にしていたバイト先だったから、カレンダーには一気に空欄が増えた。「やっとゆっくり飲めます」と元上司の愚痴の一つでもこぼしながら、心身の回復を求めて。
「トリプルワークもうしてないよ。時間作れるから付き合って」
「駄目だよ、もう友達枠だもん。友達とは付き合わないって決めてる」
「友達ではあるの?じゃあいいかな」
「友達でいいならそういうこと言わないの」
この頃は色んな人に会う度に「まだトリプルワークやってるの?早く辞めな」と言われていて、もちろん君もそっち派で。仕事に片が付いたから言っとこうかなと思った二度目は「駄目」と言われて断られた。この時点でだいたいの人は諦めるんだよ、と今の君は真面目な顔をして言ってくるけれど、正直な話本気で付き合いたいと思っていたわけではなかったから、友達という肩書きが貰えただけで自分は良かったのだ。
三度目はそこから半年経たずして。いつものバーに居た時に偶然会って「この子に2回フラれたんですよ」とキャストの人に話しながら隣に座った。バイトは1つしかしていなくて、連絡先も交換した後だったからどうかなと思って言ったのが三度目。
「ねぇ、やっぱり付き合ってよ」
「無理、だいたい恋人欲しいわけじゃないでしょ」
「それはそう」
「じゃあ告白してくんなよ」
「フラれたー」
そんな三度目。実は二度目の告白の後すぐぐらいに連絡先を交換していて、ご飯にも行って遊びにも行って、ちゃんと友人をしていたと自負している。それでもやっぱりフラれたけれど自分にダメージは無かった。だって「やめて」って言われなかったから。
三回のどれも人前で、バーで飲みながらの状況での告白だったから君は二度目までは完全に冗談だと思っていて、三度目で(あれ?)と思ったらしい。実は三度目の告白の後、別の店で「付き合うのは無理だけど、同居とか結婚ならいいよ」と言われ「じゃあ結婚してよ」と間髪を入れずに答えた自分に(本気か?)と君が悩んだおかげで今に至る。
きっと一般的ではない始まり方で。今も付き合ってはないけれど結婚はほぼ確定していて週の半分を君の家で過ごすという、「それはもう付き合ってるんでは」と周囲にツッコまれる関係で。
世の中には色んな出会いがあるけれど、こんな出会いも心が踊りませんか?