途中書きです。すみません。
「永遠の花束」
「何を育てているの?」
私の質問に彼は決まって「秘密」と言う
彼は園芸部の部長さんで
毎日朝早く花壇に水を注いでいた
だけどいつまで経っても何も生えてこない
今日も私は朝早く花壇に水をやる彼に会いに行く
そしてまたいつもと同じように質問をした
「何の種を植えたの?」
「秘密」
「花は咲くの?」
「秘密」
「いつになったら芽が出るの?」
「…わからない」
いつも「秘密」しか言わなかった彼がそれ以外の回答をすると思わなくて私は嬉しくなってずっと聞きたかった質問を彼に投げかけた
「なんでいつも『秘密』なの?」
「秘密」
彼の回答はまた「秘密」に戻ってしまった
でもその日を境に彼は「秘密」以外の言葉も少しずつ口にするようになった
相変わらず私の質問に答えるだけで自分から話すことはなかったけど
ある日育てている植物ではなく彼自身のことについて聞いてみた
思えば彼のことは園芸部の部長さんということしか知らなかった
「何年生なの?」
「…3年生」
「同い年なんだ、知らなかった」
「僕はずっと前から君のこと知っていた」
「…同じクラスになったことあったっけ?」
「秘密」
これが初めて彼が自分から自身のことを話した出来事だった
「やさしくしないで」
やさしくされたら
未来への期待を捨てきれないじゃないか
土砂降りの中にいるぼくを
きみは傘を傾け迎え入れた
せっかく覚悟が決まったのに
そのやさしさでぼくの決意はとけていく
あぁ、また死ねないのか
という絶望と
でも、まだ生きられるのか
という希望が
葛藤して
ぼくの心を苦しませるんだ
途中書きです。すみません。
「隠された手紙」
僕がこの世に生まれてから彼女が死ぬまで、毎年僕の誕生日に1通の手紙が届く。
僕が18歳の時、彼女は亡くなった。
まだ字が読めなかったにも関わらず、彼女は僕の1歳の誕生日から毎年欠かさず手紙を書いていたのに、18歳の誕生日の日に手紙が届かなかったのはおそらく字を書けないくらい体調が悪かったのだろうと思った。
でも彼女をよく知る人が「長くは生きられないって言われていたけど、最近はむしろ体調が良さそうで元気に外へお散歩もできるようになっていたのに…」と言っていたのを聞いてその予測が違うことを知った。
彼女は18歳の僕へ手紙を書いた。
僕の手元には17通しかないけれど。
この世に確かに彼女からの18通目の手紙があるんだって。
途中書きです。すみません。
もうすぐ卒業だからせっかくなのでざっくり振り返っていこうと思います。
まだテーマの「バイバイ」を回収してなくてごめんなさい。
「バイバイ」
登校日はあと2日だけ。
卒業式予行と卒業式。
中学受験して入った中高一貫校。
中高の6年間はあっという間だった。
中学1年生はオタクばっかりのオタクラスで、黒板にはそれぞれの推しの名前がデカデカと書いてあった。あまり漫画を読んだり、テレビゲームで遊んだりしたことがなかったから、友達にたくさん布教されてそのたびにはまった。
中学2年生はクラスごとのテストの平均点は最低だけど、運動神経は抜群のクラスで、球技大会・体育祭とスポーツ関係の賞状は全部掻っ攫っていった。運動神経がよくないのになぜかバスケ部に入っていたため、リレー選手になってクラスの足を引っ張った。
中学3年生は思いやりたっぷりな静かなクラスで、このメンバーと修学旅行に行きたかったけど、コロナでなくなってしまった。自分の書いた平和宣言文を広島で読みたかった。
高校1年生は中学3年生のクラスとは真逆に、みんなが自分の意見を主張するクラスで、クラスの人と意見がぶつかって大喧嘩したけど、なんとか乗り切った。理不尽なことがたくさんあってしんどかったけど、友達が話を聞いて優しく慰めてくれたから頑張れた。
高校2年生は目標は高いけどそれ相応の努力をしない怠惰なクラスで、クラス内の熱量の差で悩んでいる人たちがよく私に相談しに来ていた。ずっと努力してたのに、夏休みの学園祭準備に寝坊して遅刻ばかりしていた人たちのほうが早く成長した時は、ほんとにショックだったけど、私の努力や成長に気づいてくれている人もいて本当にありがたかった。
高校3年生は学園祭で揉めるのはもうこりごりという苦労者たちが多く集っていて、みんながなるべく楽しめるように話し合いを重ねる最終学年らしいクラスだった。高1高2と苦い経験ばかりだったからか、忙しかったけど本当に楽しい学園祭だった。球技大会では最有力優勝候補として他のクラスから警戒され、惜しくも決勝進出できずに4位で終わったけど、その後に体育祭の総合優勝を果たして、有終の美を飾った。
6年間同じ学校に通っているはずなのに、クラスのカラーが全然違って本当に面白かった。
この学校に入学してよかった。
魅力的な友達がたくさんできて、趣味もどんどん増えていって、成績は下がったけど、心はとても豊かになったと思う。
「旅の途中」
小さい頃、家族でいろいろな場所を旅したらしい。
でも大きくなって旅行の写真を見ても残念ながら覚えていないことが多い。
特に道中の景色を思い出せなくて、地図を見てこの街にはこれがあった、あの街にはあれがあった、というのを少し思い出すことはできても車窓からの景色を思い出すことは難しい。
でも、初めて自分で旅行を計画してお金を貯めて行った海外はお父さんやお母さんに連れて行ってもらった海外よりもずっと鮮明に残っていて、旅の途中の景色でさえはっきりと思い浮かぶ。
小さかったから覚えていなかっただけかと思っていたけど。
受動的か、能動的かで記憶力って結構変わるのかもしれない。