~世界に一つだけ after story~
命が燃え尽きるまで
私は恋をした。
その人は私よりも3つ年下で華奢な子
告白して、上手く行って、付き合った
「星がキレイですね」
「そうだね」
私からのプロポーズドキドキしたなあ
花束なんか買えなかったから、足元に咲くキレイな花を手に持つ。
手が震えて、落としてしまいそうだった。
「あの、」
「なんですか?」
まだ私が膝をついていることに気が付かずに星を眺める彼女。
もしかしたら幻滅されるかもしれない。
「なんで花束じゃないの」って。
もしかしたら怒るかもしれない。
星を見、うっとりする姿をじっと見つめ脳裏に焼き付けた。
最後かもしれない。って思ってね、
結果喜んでくれたんだ。
名も分からぬ小さな花でも。
私は国を飛び出した。
今で言うベトナム…辺りだったかな
そりゃあもう、怖かったさ。
もう二度とあってはならないことなのだ。
そして子供が生まれた。
そしてその子供が生まれた。
こんなに小さくて可愛い生き物がいるのかってびっくりした
きっとこの子ならこの意思を受け継いでくれるはずだ
戦争は二度としてはならぬ。
そして人を愛することは美しいことなのだ。
「あなた、終わった?あいさつは」
「あぁ、孫娘は可愛いな。」
娘が入ってきて私の腕から小さな生き物を抱き抱えた
「えぇ、そうですね」
「私もそろそろだな」
「あらあら、それ、何回も聞きましたよ」
「いや、そろそろだ。」
「そうですか」
「今までありがとう。お前は最高の妻だ。」
「あなたは最高の夫です。」
少しの沈黙の後、鳴り響いた電子音が彼の最後を知らせた。
「幸せでした、あなたのおかげで」
花が入った小さなイヤリングが風に乗って揺れた。
『命が燃え尽きるまで』
夜明け前
ちょっと落ち込む24時。
そんなときは決まってとある後輩に電話を掛ける
「もしもし?」
『はい。』
「学校、もうイヤかも」
この時間はまだ勉強していたのだろう。
優しい頭の良さそーな声に聞き惚れる
将来の夢。
科学者じゃなく、声優なんてどうだろう
オススメだけど
「なんか、仲間外れで、疎外感…」
高校生になって
「なんにも、考えたくない。」
みんなと考え方が違って
「あーあ、昔はこんなネガティブじゃなかったのに」
溶け込んでみたものの
『先輩、ボク…』
回りの人とはやっぱり合わない
『今、先輩の家の前です』
ベッドから飛び上がり窓を開ける
「ホントにいた…笑」
『います。いますよ、笑』
「逃げたいな…少し付き合って」
親は寝ているだろうから断り無しに外へ飛び出した。
ポケットにはスマホと財布
「やっほ、」
「はい。」
「大丈夫?
キミみたいな優等生がこんな夜中に出てきて」
「大丈夫です。
僕、一応優等生なので。」
「……そっか、うん。そっか」
どちらともなく歩きだす
なにも言わなくても
なにも話さなくても、気まずくない
それが学校でも欲しかった
「じゃ、またね」
別に話さなくてよかった
ただ会えた。それが嬉しい。
「え、なんで、どこいくんですか?」
家まで、送り届けたので満足したところで帰ろうとすると
引き留められる
「え?危ないから、ね?」
「危ないところ行こうとしてるんですか!?」
声を荒げたから人差し指を付きだす
「夜道が危ないから、送っただけ。家帰るよ」
「僕と逃げませんか?」
身を翻すと意外な言葉が足を凍らせた
「僕も、「期待」には疲れました。」
:
:
「結局ここまで来ちゃったね」
「はい。」
始発のバスで
始発の電車でとある駅まで来た
もう時計は4時を回った。
「海、キレイ」
「ですね。」
目の前には朝日が昇ろうとし、
ぼんやりと明るくなる海がキラキラと光っている
「眠いね」
「眠いですね」
「寝ます?」
「寝ます」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
恋じゃない。きっと
これは、母性愛だ。
愛じゃない。きっと
これは、親愛だ。
『夜明け前』
~喪失感 after story~
本気の恋
はぁ~……と深いため息をついて、形のいい尻をソファにかける
こいつが俺の彼女。
俺が煙草を吸うのを見て、もう一度ため息
疲れ果てた顔で帰ってくるこいつを見て愛おしいと思う。
これは「本気の恋」だ。
今まで付き合った人は長続きしなかった
一人目…三ヶ月
二人目…五ヵ月
三人目…二ヵ月
:
:
九人目…三年 (これが隣の奴)
一言で言えば、
女垂らしで喧嘩で警察に世話になってばかり。
そんな俺を、当時三つ上の先輩が正してくれた。
それがこいつだった。
「ごめんね、怖かったよね」
初めて喧嘩で負けそうなとき、
そう言ってきたのがあいつ。
当時はバカにしてんじゃねぇ!って思ってた
今はどうしても好きで、好きで、好きだ。
「そろそろ、同棲か?」
「いや、向こうはそんな気ないとおもーけど?」
「言ってみなきゃ分かんねぇだろ」
そう言った俺のダチ
その言葉を信じて
「どーせいしない?」
「はぇ?……えっと…急すぎない?」
そんなこと言って目線反らしてるけど、嬉しいんだろうな~って分かる。
顔がそう語ってる。
うれしい
しあわせ
だいすき って。
よかった。
じゃあ日を改めて同棲したいってちゃんと言おう。
「嬉しい!ありがとう!
…でもやっぱりあんたは不器用だよね、笑」
「ん?」
「普通、ずっと一緒に居たい、だから同棲してくれ!
でしょ?」
「俺はその「普通」なんかに捕らわれないの。」
「うっそだ~!恥ずかしいだけのクセに~」
始まった、度々始まる彼女の
「俺をいじる」のコーナー
すでに赤い顔が、図星を刺されてもっと赤くなる
今まで感じたことのない、恥ずかしさと焦りに変な汗が吹き出る。
「別に火事になっただけ、」
つい口走ってしまった
今思えば、いつもみたいに流せばよかったんだ
こんなこと言うんじゃなかった。
「は?」
にこにこ笑顔が消え失せ、
地を這うようなドスの聞いた声が聞こえ、
一瞬にして、血の気がサッと引いた
「出てけ。今すぐ!!」
突然のことに驚いてなにも言えずにいると
彼女は泣き出した
「結局私はあんたの家政婦なんだね。
洗濯して、掃除して、ご飯作って、ご機嫌とりまで?」
「ちが」
「家がヤニだらけになっても文句一つ言わずに過ごしてきたのに、ずっと許してきたのに!!」
「冗談!」
「最後には火事になったから居候させてくれ?冗談じゃない!」
「ごめん!聞いて!」
「私はあんたのなんなの!
母さん?知り合い?友達?
…もしかして、まだアネキ止まり?
あんたの尻拭いはもう嫌だ、」
そう訴えるとスンと静かになって、足を玄関へ運んだ
「ちょっと今は外に出てくる。
冗談でもその冗談はイヤだった。
同棲しようって言ってくれたの嬉しかったの。
それがないことにされるのが悲しかった。
ごめんね、怖かったよね」
一つ俺の頭を撫でてからバタリと扉は閉まった。
たぶんすぐ戻ってくるだろ
この間の友達に電話を掛ける
「もしもし?俺、やっちまったわ…」
終始説明すると友達は呆れたように怒った
「なにしてんだよ!追いかけろよ!」
とりあえず、スマホと財布を持って家を飛び出した
「お前ほんとなんにも分かってねぇな。
女の子はいつだって、誰だって
プリンセスになりたいんだよ」
今なら、あいつの怒った理由が分かる
夜が明けてきたころにあいつの家に行くともう鍵は閉まっていて、連絡先は消去されていた。
あいつの肺を俺で埋めてやりたかった。
外で煙草を吸う人を見たら俺を重ねて、
思い出してほしかった。
だから形振り構わず煙草を吸ってた。
あいつにとって俺は今、なんだろう
きっともう、終わりなんだ。
雨が降りしきる中あいつを扉の前で待っていても出てくることはなかった
扉を開けて言ってほしい。
ボロボロでグシャグシャになった俺の頭を撫でて
「よく頑張ったね、あとは私に任せて
あんたとあんたのダチの分殴ってくる
もっと人を頼りな」
へったくそなウィンクしてから
「ごめんね、怖かったよね」
って。
「あ、日の出」
『本気の恋』
カレンダー
今日もカレンダーが届く
向かいの家は僕の好きな子の家。
去年は同じ幼稚園だったのに、小学校は区画が別れて変わっちゃった
だから今日も送る。
だから今日も送られる。
赤レンガ造りの家がずらりと並び、間には紐がいつくもぶら下がる。
そこには僕の服やあの子の服。
「まま、カレンダーちょーだい!」
「はい、どうぞ」
今日あったこと、楽しみなこと、悲しかったこと
破ったカレンダーいっぱいに書く
「できた!……行け」
ふわりふわり風に乗って
優しい光に照らされて
あの子の窓に……カツン!
出てきたあの子は昨日と同じ顔
でも昨日とは違うあの子
ブロンドの髪が揺れて、たんぽぽ見たいな輝く瞳が僕を捉える
白いワンピースがとっても似合ってるなぁ
「ありがとー!」と手を振ってにこにこと笑ってる
僕の、はーとがドキドキする
『カレンダー』
喪失感
私の彼氏はタバコを吸う人
帰ってくるといつも煙たい匂いがお出迎え。
正直最悪。
「ねえ、部屋で吸うのやめてくんない?」
「んー、気を付ける」
「いつもそういうよね、で、次の日これ」
「ごめんね~?」
ため息をついてソファにどかっと腰をおろす
反省していないかのように、
…いや、訂正
反省していないので、
またタバコに火を点ける
それでも大好きだから許しちゃう。
結構ハマってたワケだ
そんなあいつと別れた。
理由はタバコ。
自分の部屋が火事になって私の所に居候するなんて言ったから
もっとロマンチックな言い方がよかったのに!
そんなこと言って、出ていっても追いかけてもくれない。
帰ってきたら誰もいない。
堪忍袋の緒が切れて、私からサヨナラを悟らせた。
そういえば
あいつは、いつも私のベッドに
私よりも早く潜り込んで私を手招きしてた。
そして、寝るまで背中をとんとん触れてくれてた。
一人で温もりを感じない広すぎるベッドで雨の音を聞きながら朝まで過ごした。
寂しかった。
少しして、
新しい彼氏が出来た。
私の彼氏はタバコを吸わない人
帰ってくるといつも子犬みたいな彼がお出迎え。
正直最高。
…でもそれは他の人からしたらの評価でしかない
彼は完璧だと思う。
それはもう私とは釣り合わないくらいに。
家事も手伝ってくれる。
体調が悪いときは側に居て、
落ち込んだら慰めてくれる。
飲み会だって出来るだけ行かない。
行ってもすぐ帰ってくる。
でも、私が求めているのとは違った
家事は全部私に頼る
体調が悪いときはそっとしておいてくれて、
落ち込んだら笑い話にしてくれる。
飲み会は程よく楽しんで、
嬉しそうな顔で帰ってくる。
あと、タバコの匂い
あの時は煙たかった匂いも
今は懐かしく愛おしい
火を点ける横顔とか
目を細めて笑うところとか
普段はお前って呼ぶのに、
友達の前だと名前で呼んだり
絶対、浮気しなかった
帰ったら必ずあいつが居た
合革がボロボロになったソファに家主のように大股開いて
「おかえりー」
と、笑ってた。
結果。
完璧彼氏とも別れた。
私からさよならを告げた
彼は泣いた。
私も泣いた。
けど、次の日からはあいつを探した
どこにいるのかも分からないあいつを。
いつも吸ってたあのタバコの匂いを感じると振り向いてしまうんだ。
結局ハマってたワケだ
「あ、もう日の出…」
『喪失感』