short delusion

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夜明け前



ちょっと落ち込む24時。

そんなときは決まってとある後輩に電話を掛ける


「もしもし?」

『はい。』

「学校、もうイヤかも」


この時間はまだ勉強していたのだろう。
優しい頭の良さそーな声に聞き惚れる

将来の夢。
科学者じゃなく、声優なんてどうだろう

オススメだけど


「なんか、仲間外れで、疎外感…」


高校生になって


「なんにも、考えたくない。」


みんなと考え方が違って


「あーあ、昔はこんなネガティブじゃなかったのに」


溶け込んでみたものの


『先輩、ボク…』


回りの人とはやっぱり合わない


『今、先輩の家の前です』


ベッドから飛び上がり窓を開ける


「ホントにいた…笑」

『います。いますよ、笑』

「逃げたいな…少し付き合って」


親は寝ているだろうから断り無しに外へ飛び出した。
ポケットにはスマホと財布


「やっほ、」

「はい。」

「大丈夫?
 キミみたいな優等生がこんな夜中に出てきて」

「大丈夫です。
 僕、一応優等生なので。」

「……そっか、うん。そっか」


どちらともなく歩きだす

なにも言わなくても
なにも話さなくても、気まずくない

それが学校でも欲しかった


「じゃ、またね」


別に話さなくてよかった
ただ会えた。それが嬉しい。


「え、なんで、どこいくんですか?」


家まで、送り届けたので満足したところで帰ろうとすると


引き留められる


「え?危ないから、ね?」


「危ないところ行こうとしてるんですか!?」


声を荒げたから人差し指を付きだす


「夜道が危ないから、送っただけ。家帰るよ」

「僕と逃げませんか?」


身を翻すと意外な言葉が足を凍らせた


「僕も、「期待」には疲れました。」



  :
  :



「結局ここまで来ちゃったね」

「はい。」


始発のバスで
始発の電車でとある駅まで来た


もう時計は4時を回った。


「海、キレイ」

「ですね。」


目の前には朝日が昇ろうとし、
ぼんやりと明るくなる海がキラキラと光っている


「眠いね」

「眠いですね」


「寝ます?」

「寝ます」


「おやすみなさい」

「おやすみなさい」




恋じゃない。きっと
これは、母性愛だ。

愛じゃない。きっと
これは、親愛だ。





『夜明け前』

9/14/2024, 12:54:08 AM