君の奏でる音楽
昔から君はピアノが得意で
音楽室でいつも弾いていた
誰も聞いていなくても
鼻歌まじりで歌いながら
楽しそうに奏でていたのを
ただじっとみていた
たぶんその姿を見て
僕は君を好きになったと思う
時は経ち
今はキッチンで
料理を作る君がいる
あの時と同じように
鼻歌を口ずさみながら
手際よく動いている
楽しそうに料理してるのを
じっと見ているのが好き
たぶんその姿に
また僕は君を好きになる
部屋には君の作る料理の
楽しそうな音で溢れている
麦わら帽子
子供の頃の夏の日
人生をかけた嘘をついた
大丈夫、痛くないよ
川に溺れた私は
夢中でつかまるものを探した
死んでしまうんだ
溺れもがいてる自分を
背後から見ている視界
走馬灯という言葉は
だいぶ後から知った
たまたま掴んだ戸板に
全てをかけて手を伸ばした
ずぶ濡れで帰る家路
またお母さんに怒られる
そう思って謝ると
お母さんは泣いていて
黙って体を拭いてくれた
安心させることを言わなきゃ
そう思って出た言葉
大丈夫、痛くないよ
お母さんとはあの川に
行かないことを約束する
死ぬということを
初めて意識した瞬間
数少ない子供の頃の記憶
後ろから自分を見てた自分
私が私だけでなく
誰かを傷つけた瞬間
数少ない子供の頃の記憶
お母さんを泣かせた自分
人より怖がりになった
痛いことを避けていった
臆病と言われてもいいと思った
自分が悲しむ姿を見せて
より誰かを悲しませることを
どうしてもしてはならない
直感的に理解した一瞬に
必要な嘘が存在することを知った
あの日から今までに
お母さんを泣かせたことは3回あった
そのうち2回は嬉し涙
残り1回は本気のケンカだった
それでも今日もおはようと
笑顔で挨拶して一緒に朝食をとる
子供の頃のお母さんの涙は
とてもいけないことをした
してはいけないことをした
雷みたく瞬時に理解させる
そうさせてはならない
そこに人生をかけた嘘は今日も生きてる
大丈夫、痛くないよ
その言葉はあの日の川原にずっと残っている
あの時に飛んでいった麦わら帽子と共に
終点
終わりって自分で決めるもの?
自分で決められる?
それを決めると仮定しても
本当の終わりを決められるのか
終点=限界点となるのだろうか
何かを終わらせる理由
もっともで正当な理由を
そう考えるだけで
限界まではいけない
所詮は弱き者の主張
次があるから終わらせられる
始まりの為の終わり
本当の終わり
終点の由縁とは
それは死に似て非なるもの
レールに例える車止め
✕印に枕木を乗せて
本当の終わりを教えてくれる
現実世界にも分岐点は
いくつもあった
わかっていても
自分の意図した道なんて
選べることは少ない
終わらせたいものほど
終わらせられない
それすら自分で決めている?
選んだ者にも理由があって
思うままに選んでるとは
限らないから
このレールすら
自分で選べなかった道
進む道はもちろん
終わりすら選べずに
次の分岐点へと
向けられている
選べなかった始まり
選べなかった脇道
選べない終点
なんと思うまま生きられない
望めば望むほど
この手からこぼれ落ちていく
何もかもが終わっているのに
自分の終わりすら選ばない
たったひとつ選べることを
選ばない選択をしながら
終点=限界点だけを信じて
まだ限界でないという
淡い幻想を糧としながら
選べない選ばないを
継続しながら
終わらない議論を
独り弱々しく考えている
上手くいかなくたっていい
何かを始める時の合言葉
上手くいかなくたっていい
完璧なイメージをして
始められることなんて
滅多にない
それでも何かとやらないと
いけないことも多いわけで
とりあえず感をなるべく出さず
結果が伴わないことも踏まえた
保険をかけるにとっておきの一言
なんて図々しい発想なんだと
自らにため息をついて
それでも始めなければならい
だるさにエンジンかけて
エンストを怖れている
少しずつ大人になって
全力という言葉が駆け離れて
大体これくらいと
目分量だけは上手くなり
ここら辺かなと見切りをつける
そんなスキルばかり
いつの間にか
自分に期待しなくなっていた
そのまま普通になって
気づかず時は過ぎてく
もうすでに上手くいってない
それを本当が知ってるから
私に遠回りを教えてる
ここで選ぶ人生の追分
久しく忘れてた
チャレンジというものに
挑む気持ちはあるか?
本当が問いかけてくる
この体での全力疾走は
カッコ悪くてみっともない
それでも行くか?
たぶん本当は知っている
私がどちらを選ぶかも
上手くいかなくたっていい
面白そうな方を突き進もう
同じ言葉を合言葉にしても
心は少しドキドキしている
最初から決まっていた
自分自身を許せないことを
自分自身を愛せないことを
見放すほうが楽に思えて
人より一段も二段も下に見る
そうすることの見方をすれば
世界の不平等を受け入れられた
こんなこと最初から決まっていた
そうする諦めからのスタートで
出遅れをいつも正当化してきた
それでいいと思っていた
ある日いきなり
みんなの前に立たされた
私が先頭を走るなんて
ムリムリムリと心はざわつく
後ろからついてくるタイプ
そう思って後に続いてきた
どうすればいいのかわからない
とりあえず何か言え
そう思ってからは夢中だった
なぜかみんなの反応は
悪くはなかった
むしろこんなに話せるのかと
驚きの反応が多かった
それを見てる私も驚いた
自分では殻を破れない
状況から作られた反応
それは今までにない立場
慣れない居場所だからこそ
通常ではない私は発動された
そこで得られた新しい感覚
なぜかみんなが同じ目線で話してくれる
たぶんそれは
みんなが変わったのではなく
私自身が変わったんだ
自ら一段駆け上がった
それは突発的な反応だった
でも、それは今まで
私からやったことではなかった
自分からは出来ないこと
それでも周りに待っててくれて
夢中で応えてみると
いつの間にか
見える景色は変わってた
周りが私を育ててくれる
自分の殻に籠ってばかりも
いられないってことを
わかってたつもりでも
どうにもできなかった
それでもみんなが
見放さなかったのに
知らずに思い込んでいた
どうせ私なんかと
勝手に一人諦めていた
周りを見ていたつもり
それでも結局
自分しか見ていなかった
なんてわがままなんだ
それでもいつかこうやって
気づかせてもらえることも
最初から決まっていたこと
そう思えたら
今まで見ていた景色を
自然と手放すことができた
今は一緒に笑いあっている