中宮雷火

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3/9/2025, 10:45:21 AM

【表八句】

我は数十年に渡りてこの世の行ひをこころばみき。
この世には憂きこともすはたが、そはさながら神様が我に与へたまひし試練と思ふことにせり。
憂きことも多き反面、思ふ人に囲まれげに楽しき世にもありき。
さるほどに、我はそろそろ次の世に行くべし。
これより生まるるならむわらはどもが健やかに暮らすべかるべく、我は彼らを見守ることにす。
あな、この天下はさても麗しきことか。















私は数十年に渡ってこの世での修行を頑張った。
この世では辛いこともあったが、それは全て神様が私に与えてくださった試練と思うことにした。
辛いことも多い反面、愛する人に囲まれて実に楽しい人生でもあった。
さて、私はそろそろ次の世に行かなければならない。
これから生まれるであろう子供たちが健やかに暮らせるように、私は彼らを見守ることにする。
ああ、この世界は何と美しいことか。

3/5/2025, 1:17:12 PM

今日もネタ切れなので、代わりに雑学?を書いておきます。

哲学には「問答法」と呼ばれるものがあります。
これは哲学者ソクラテスが用いた方法で、Wikipediaによると「対話によって相手の矛盾・無知を自覚させつつ、より高次の認識、真理へと導いていく手法」だそうです。

分かりにくいですね。
例を用いて説明します。
例えば、A子さんがこんなことを言っているとします。
「私は幸せになりた〜い!!」
それに対して、B太郎さんがこう問います。
「じゃあ、一体『幸せ』って何?」
それに対して、A子さんはこう答えます。
「ストレスが無くて、精神的に満たされた状態のことかな」
再びB太郎さんが問います。
「ストレスが無くて精神的に満たされた状態とは、一体どのような状態なのかな?」
それに対してA子さんがこう答えます。
「病気にかかっていなくて、不安を抱えていない状態だと思う」
A子さんの言葉を聞いて、B太郎さんはこう言いました。
「つまり、病気にかかっている人は幸せでないということ?」
A子さんは、B太郎さんの主張を否定しました。
「それは違うと思う……」
B太郎さんは再び口を開きました。
「A子さんの言っていることは矛盾しているよ。病気にかかることは幸せでは無いけど、病人は幸せになれると言っているんだから」

……お分かりいただけましたか?
この一連の会話を通して、B太郎さんはA子さんの意見に「矛盾」を見出しました。
「B太郎さんが問い、A子さんがそれに答える」という会話を繰り返していくうちに、A子さんの主張は矛盾したものになっていきました。
これが問答法です。
ひたすら質問攻めすることで、相手の主張に潜む矛盾を暴き、より賢い認識に辿り着くというものなのです。
「ロジカルシンキング」とか「クリティカルシンキング」に近い考え方ですね。

結局、何が言いたかったのかというと、
「ソクラテスってすごい」ってことです。

2/25/2025, 12:42:58 PM

【悲報】
ごめんなさい、ネタ切れです。
その代わりに、有益(?)な情報でも書いておきます。

8月30日は「冒険家の日」だそうです。

2/24/2025, 10:52:39 AM

【香水達の喧嘩】※再掲

給食の後の5時間目、教室は異様な匂いに包まれていた。
一言でいうと、臭い。
気持ち悪い。
なぜならば、今日は参観日だ。
参観日ということは、親が来る。
母親とは不思議で 、これでもかというほど香水を着けたがる。
すると、教室は一気に香水臭くなってしまうのだ。
少しだけふわっと香るなら良いものの、
異なる匂いが混じり合えば喧嘩してキツイ臭いを放ってしまうのだ。

そして今日は、香水達の喧嘩が酷く激しかった。
「教室、臭くね?」
僕は、隣に座っている友達にこっそり言った。
「だよな、気持ち悪い」
やっぱりそうだ、間違いない。
香水達が喧嘩している。
僕はちらっと後ろを向いた。
母親達はヒソヒソと話し、笑っている。
きっと、本人達は自らの香水が放つ異臭に気がついていない。

幸いにも窓側の席なので、外から入り込む風が喧嘩を仲裁してくれている。
しかし、隣に座る友達は辛そうだ。
「大丈夫か?」
本当に心配になって、思わず声をかけた。
「うん、大丈夫。全然大丈夫だよ」
いや、全然大丈夫ではなさそうだ。
授業はあと30分。
このままでは、早ければ5分後にも彼のライフが0になってしまいそうだ。
どうしよう。
保健室に連れて行くべきだよな。

しかし、1つ問題があった。
保健室に行くならば、教室の後ろのドアから出なければならない。
これは担任が作ったルールなのだが、授業中に廊下に出るときは、後ろから出ることになっている。
前から出ると、黒板が見えづらくなって邪魔になるらしいのだ。
後ろを通るということは、母親達の前を通らなければならないということだ。
こんなの、自ら殴られに行くようなものではないか。

僕は隣を見た。
友達は顔を真っ青にして俯いている。
いよいよヤバいことになってきたな。
もう保健室に連れて行くしかない!
「先生!」
僕はピンと手を伸ばし、先生を呼んだ。
「どうした?」
「橋本さんが具合悪そうです!保健室に連れて行ってもいいですか?」
「橋本、大丈夫か?菅田、付き添ってあげてくれ。あ、橋本さんのお母さんもお願いします」
僕達は席を立った。
友達を支えて前から出ることにした。
絶対に先生から何か言われるだろうけど、もうそんなの知らない。
「良樹!大丈夫?」
友達のお母さんが駆け寄ってきた。
しかし友達は
「ちょっ…と、近づか、ないで…」
と、突っぱねてしまった。
「おい、後ろから出ろよー」
先生が言った。
しかし、僕達は無視して前から出た。
先生の前を通ったとき、友達が呟いた言葉が忘れられない。
「香水、気持ち悪っ…」

友達を保健室に連れて行った。
今日の保健室は人が多かった。
「良樹に付き添ってくれてありがとうね。もう戻っても大丈夫だよ」
本当はもう少しここにいたかったけど、早く戻らないと先生に怒られるだろう。
僕は教室に戻ることにした。

でも、本当は戻りたくない。
あの教室にいたくない。
授業は残り20分。
サボるのは難しそうだ。
せめてもの抵抗として、ゆっくりと廊下を歩いた。
外から流れ込む風がやけに心地よい。
無臭の風が、僕を撫でてくれるようだ。
 
教室に戻ると、またキツイ臭いを放つ香水に殴られた。
僕は香水に殴られつつも耐え、無事に参観日を終えることができた。

帰りに保健室に寄った。
友達の顔色はかなり良くなっていた。
安心した。
帰り道、お母さんに褒められた。
「すごいじゃん、友達を保健室に連れて行くなんて。
良い子だねぇ〜」
そういうお母さんも、香水の臭いがキツかった。

しばらくして、学校からあるプリントが配られた。
参観日に関するプリントだ。
そこにはこう書かれていた。
「香料による体調不良が増えていますので、参観日に香水をつける際は適量の使用に留めていただけると幸いです。」

2/20/2025, 11:01:57 AM

【祝福のブルース】

夜が深くなってきたわね。
怖い話でもしないかって?
知ってるでしょ、私が怖い話嫌いなこと。
……ええ〜、眠れないの?
仕方ないわね。
それじゃ、素敵なお話をしてあげるわ。
私、実は昔は海に住んでいたの。
信じてくれないでしょうけど、人魚だったのよ。
海も陸もどちらも楽しいけれどね、生涯でいちばん美しい経験をしたのは、海にいたときよ。
このお話したら、寝てくれるかしら?

―――――――――――――――――――――
私は16歳の頃に、初めて恋をしたの。
陸に住んでいる人間だったわ。
その日は空が真っ青で、波が穏やかだったわ。
砂浜でのんびり歌を歌っていたら、彼がやってきたの。
ビックリしちゃって、慌てて隠れちゃったけど、岩陰から彼を見ると、それはそれはとても素敵な容姿をしていたの。
「人魚姫」っていう童話があるでしょう?
まさに、あれと同じだったわ。
やっと人魚姫の気持ちが分かった気がしたの。
一目惚れだったわ。
あの日から、彼のことが頭から離れなくなったの。
毎日毎日、彼のことばかり考えていたの。
彼とお話してみたい、とか、彼と手を繋いで歩いてみたい、とか。
毎日そんなことばかり考えていたわ。

それから、毎日のように海岸の近くへ出向いたわ。
いつか、また彼が来るんじゃないかって。
人魚と人間の恋って難しいけれど、私ならきっと出来るって思ってたの。
だって、1回しか見たことのない人のことをいつまでも覚えてるのよ?
それって運命の恋じゃない?

だけどね、彼は全く来てくれなかった。
次第に悲しくなったわ。
「運命じゃ無かったんだ」って思ってしまって。
彼と出会って1年が経った頃には、もう海岸には出向かなくなってしまったの。

そうして2年の月日が経って、私は久し振りに海岸に出向いたの。
あの日と同じように、空が真っ青で波が穏やかだった日のことよ。
私は砂浜に座って、のんびりと歌を歌っていたの。
そしたら、何が起こったと思う?
驚いたことに、彼がやってきたの。
ビックリしたわ。
まさか、また会えるとは思ってもいなかったんですもの。
でもね、彼は1人じゃなかったの。
隣に、彼と同じくらいの歳の女の子がいたの。
女の子は艷やかな髪を風に靡かせていて、彼は女の子の横でやけにソワソワしていたわ。
私、直感的に悟ったの。
「ああ、これから彼はプロポーズするんだ」って。
やっぱり、あれは運命の恋じゃなかったみたい。

しばらく、岩陰に隠れて様子を見ていたんだけど、一向に彼がプロポーズしないから、こっちまでドキドキしちゃったわ。
早くプロポーズしちゃいなさいよ、と思ってしまったわ。
でも、突然彼は覚悟を決めたみたい。
真剣な顔つきになって、女の子にこう言ったの。
「貴方は、僕のことが好きですか」
しばらく間が空いて、女の子はこう答えたの。
「……はい」って。
「あの、良ければ……その……僕と一緒に、ずっと一緒にいてくれませんか?」
これが、彼が言ったプロポーズの言葉だったわ。
女の子は何て答えたと思う?
「……よろしくお願いします」って答えたわ。
彼の恋は、見事に叶ったの。
私は、彼らの前に出てきて祝福することは出来なかったけれど、とても気分が良かったから、こっそりと歌を歌ってあげたわ。
「あれ、どこからか歌声が聞こえる」
「きっと、誰かが私達の恋を祝ってくれてるのかもね」
2人はお互いを見つめて、幸せそうに微笑んでいたわ。

―――――――――――――――――――――
ところで、人魚には素敵な力があるって知ってた?
人魚の歌声には、願いを叶える為の魔法が込められているの。
私は、こんな願いを込めながら歌ったわ。
2人が、いつまでも一緒に幸せにいられますように、って。

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