終わり、また初まる
僕の人生は、今日終わった。22歳だった。
次に神に連れていかれた場所は、どこなのかも分からない暗い場所。両手と両足は鎖で縛られ、身動きが取れない。火葬された自分の体は燃え尽き、骨だけが残る。黄泉の国でも同じらしい。
やがて、自分の前に神と思われる男が前に立つと、するりと鎖を外し、別の場所に運ばれた。
所々火が燃えている場所。自分はどこにいる?
隣には、神の姿。自分は、子供の姿に変わっていた。まだ歩けない赤ちゃん。おくるみに包まれ、優しく抱かれる姿。
終わった人生は、また、初まる。
次は、どんな世界だろう。
幼い頃、父親を亡くした。当時母親は悲しませないためか、子供を喜ばすためか、お父さんは星になったんだと教えてくれた。大人になった今でも、その記憶が鮮明に残っている。
当時、母の教えをもろに受けていた私は、当然父親が星になったと純粋に思い込み、毎晩星に話しかけていた。
「お父さん、今日は--」
大好きな父親と話している気分になれたのだ。
そして社会人になると、終電を逃す一歩手前まで仕事をする日々。当然父親のことなど、頭から抜けてしまっていた。久しぶりの休日に、星を見つめていると、突然幼い頃に、父親に話しかけていたことを、ふと思い出したのだ。
「お父さんも、仕事大変だったのかな、」
一度星に話してみると、
なんとなく、気が楽になった気がした。
願いが一つ叶うのならば。亡くなった猫が帰ってきて欲しいと願う。その猫は、祖母の飼い猫。六匹飼っている猫のうちの一匹の猫はつい先日亡くなった。首の腫瘍を取るために手術をした結果、医療ミスにより亡くなったのだ。
祖母は一ヶ月ほど完全に落ち込み、涙を流すようになった。しかし、祖父はもう忘れろと言って話を聞かない。孫の私には、祖母にどんな心の内があるのか分からないが、願いが一つ叶い、猫が帰ってきてくれるのなら、祖母の心の内を晴らせると思うからだ。だから、猫が帰ってくることを願う。
「そっか、そっか、それは寂しいね」
本当は、祖母にそう言い、背中をさすることしか出来ない、自分が嫌なのかもしれない。
好きだよ好きだよ好きだよ。
私はストーカー。今日も変わらず、一人のイケメンを追いかけていた。目標は無かったが、本気で愛していたのだ。テレビで彼の姿を見る度に、とてもドキドキする。しかし、いずれ、幸せも壊されるもの。終わりを告げた私のワルツ。
彼は、結婚したと発表したのだ。
メディアに向けて喜んでいた彼の姿に、絶望と悲しみとよく分からない感情が入り交じった。
嗚呼。嗚呼嗚呼!!
彼はアイドル。私はファン。分かっていたのだ。
結ばれないことはもうずっと。しかし、壊されると悲痛の叫びが喉から焼けるほどに飛び出す。
私は彼と結ばれたかった。夢を見ていた女だ。
いつも、寄り道をする。毎日行く場所がある。
「ずっと親友だよ。」と言って、友人が秘密基地と言って紹介してくれた場所。太陽に照らされた彼の笑顔は、いつになっても忘れない。その笑顔を壊したのは、新学期に入ってすぐ頃の春。入学式を迎え、帰り道だった。友人とは同じ学校に進学。この先は明るい未来が待っていると信じていた。たとえ何があろうと、支え合えると。
でも、、その理想は真っ赤な血で汚れた。
友人と自分は、居眠り運転の車に撥ねられた。
自分は、一年ほどで日常生活に支障がないほどに回復したが、一方友人は、もう三年も植物状態。友人との秘密の場所に、勧誘者は来なくなった。いつか来るかと願いながら、流れる静寂を見つめる。そして自分の静寂を破った声は、聞き覚えのある声。
「秘密の場所。覚えてくれてたんだ」
「三年ぶりだね。」