蒼白ねっこ

Open App
3/10/2025, 11:28:55 AM

願いが一つ叶うのならば。亡くなった猫が帰ってきて欲しいと願う。その猫は、祖母の飼い猫。六匹飼っている猫のうちの一匹の猫はつい先日亡くなった。首の腫瘍を取るために手術をした結果、医療ミスにより亡くなったのだ。

祖母は一ヶ月ほど完全に落ち込み、涙を流すようになった。しかし、祖父はもう忘れろと言って話を聞かない。孫の私には、祖母にどんな心の内があるのか分からないが、願いが一つ叶い、猫が帰ってきてくれるのなら、祖母の心の内を晴らせると思うからだ。だから、猫が帰ってくることを願う。

「そっか、そっか、それは寂しいね」


本当は、祖母にそう言い、背中をさすることしか出来ない、自分が嫌なのかもしれない。

3/9/2025, 10:27:41 AM

好きだよ好きだよ好きだよ。
私はストーカー。今日も変わらず、一人のイケメンを追いかけていた。目標は無かったが、本気で愛していたのだ。テレビで彼の姿を見る度に、とてもドキドキする。しかし、いずれ、幸せも壊されるもの。終わりを告げた私のワルツ。

彼は、結婚したと発表したのだ。
メディアに向けて喜んでいた彼の姿に、絶望と悲しみとよく分からない感情が入り交じった。

嗚呼。嗚呼嗚呼!!
彼はアイドル。私はファン。分かっていたのだ。
結ばれないことはもうずっと。しかし、壊されると悲痛の叫びが喉から焼けるほどに飛び出す。

私は彼と結ばれたかった。夢を見ていた女だ。

3/8/2025, 1:06:29 PM

いつも、寄り道をする。毎日行く場所がある。

「ずっと親友だよ。」と言って、友人が秘密基地と言って紹介してくれた場所。太陽に照らされた彼の笑顔は、いつになっても忘れない。その笑顔を壊したのは、新学期に入ってすぐ頃の春。入学式を迎え、帰り道だった。友人とは同じ学校に進学。この先は明るい未来が待っていると信じていた。たとえ何があろうと、支え合えると。


でも、、その理想は真っ赤な血で汚れた。

友人と自分は、居眠り運転の車に撥ねられた。


自分は、一年ほどで日常生活に支障がないほどに回復したが、一方友人は、もう三年も植物状態。友人との秘密の場所に、勧誘者は来なくなった。いつか来るかと願いながら、流れる静寂を見つめる。そして自分の静寂を破った声は、聞き覚えのある声。


「秘密の場所。覚えてくれてたんだ」
「三年ぶりだね。」

3/7/2025, 12:52:26 PM

口笛を吹いた。ラララーと。彼女に向けて歌う歌は、いつも歌詞にラララが付く。彼女は、ラララという言葉が子守唄に聞こえると言うのだ。

やがて結婚した二人は子供を授かったが、彼女はお腹を擦りながらラララと歌う。
それがいずれ、子供にどんな好印象を与えるのかは分からないが、彼女のお腹から出てくる子が、元気に産まれてきてくれたらいいなと思うばかりだ。

3/6/2025, 10:20:58 AM

自分は、三年前に娘を亡くした。
妻は出産と同時に、体の負担に耐えられず亡くなり、娘は、一歳を迎えた頃に白血病で亡くなった。最期に、私の耳元で弱々しい声で口を開いてくれた娘の言葉は、忘れられない。

当時、シングルファーザーの自分は、娘のための出費でカツカツ。投薬も手術も行い、何度も仕事を休み娘に寄り添った。そして自分はご飯を抜いてまで出費し、痩せ細っていたのを覚えている。

そしてその一年後、寄り添ってくれた女性と結ばれた。そして産まれた息子は、あまりに娘と似ている。そして一歳になった息子が口にしたことは、奇跡と呼べることなのだろうか。


「僕の、お姉ちゃん白血病だったんだね」


私は一度も娘の話をしていない。なぜ息子の口から娘の話題が出てきたのかは分からないが、きっと風の運んでくれた奇跡だと思っている。

Next