質問させてください。とアナウンサーは口を開いた。テレンという音の直後、「question」そう流れる機械音と共に、私の身体は大量の証明により、真正面から照らされた。クイズ王として生きて早五年。いつまで、この生活だろう。
プライバシーに触れる質問をされるのは。
「では、私からも質問です」
「質問の変更をお願い出来ますでしょうか?」
病院で入院している彼。最近は呼吸すらままならず人工呼吸器を装着させられてしまい、彼は意識を戻すことは少なくなっていった。顔色の悪い彼の顔を見ると、胸がきゅっと締め付けられる。ずっと苦しそうに呼吸をしているのか、すぅー、すぅー、と呼吸器の音と共に彼の呼吸音が流れる。そんな彼の小指に、自分の小指を当てて握った。私は彼を置いて、仕事で海外に行ってしまうのだ。つまり約一ヶ月、病院に来られなくなる。
「どうか死なないで。私が戻るまで」
「約束だからね」
そう言い、彼の病室を後にした。その一ヶ月後、彼は人工呼吸器をつけてはいたが、意識を取り戻していた。座るようにベッドに身体を預け、顔はこちらを向いている。その瞳は、私の姿を捉えて離さない。
「俺は死なないよ。約束なんでしょ?」
その瞬間、彼の前で初めて泣いた。
それは、二人で桜を見に行った日だった。
隣に並ぶ彼は病弱で入院している。ようやく看護師に外出許可をもらうことができたのだ。外に出ると、体感ではあまり風がある訳では無いのに、桜はおかしいほど揺れていた。桜はこちらをひらりと囲うように飛び交う。桜に囲まれて、彼は初めて言葉を口にした。
「ひらりって、綺麗だね」
入院してから一度も見ることの出来なくなった彼の笑顔は、桜と共に散ったのだ。ひらりと。
「あなたは誰?」彼が私にそう言い放ったのは稀ではない。彼は事故で記憶喪失になったのだ。全て、居眠り運転をしたトラックに撥ねられたせいだ。私は、彼を諦めることは出来ない。
「私は、あなたの恋人だよ」