病院で入院している彼。最近は呼吸すらままならず人工呼吸器を装着させられてしまい、彼は意識を戻すことは少なくなっていった。顔色の悪い彼の顔を見ると、胸がきゅっと締め付けられる。ずっと苦しそうに呼吸をしているのか、すぅー、すぅー、と呼吸器の音と共に彼の呼吸音が流れる。そんな彼の小指に、自分の小指を当てて握った。私は彼を置いて、仕事で海外に行ってしまうのだ。つまり約一ヶ月、病院に来られなくなる。
「どうか死なないで。私が戻るまで」
「約束だからね」
そう言い、彼の病室を後にした。その一ヶ月後、彼は人工呼吸器をつけてはいたが、意識を取り戻していた。座るようにベッドに身体を預け、顔はこちらを向いている。その瞳は、私の姿を捉えて離さない。
「俺は死なないよ。約束なんでしょ?」
その瞬間、彼の前で初めて泣いた。
3/4/2025, 10:41:36 AM